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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

消費税導入の遅れがバブル経済を引き起こし財政再建を遅らせた

我が国で消費税が導入されたのは1989年のことです。

それまでにも消費税の導入については何度も議論されていたのですが、この年まで先延ばしされてきました。増税すると国民の不満を買うので、自分が総理大臣の時にはやりたくないというのが本音でしょう。しかし、必要とあれば嫌われ者になってもやらなければならないのが、一国の首相の勤めです。

それをやらずに先延ばししたことがバブル経済の始まりだと指摘するのが、通商産業省(現経済産業省)で働いていた経験のある作家・評論家の八幡和郎さんです。

経済大国の基盤が崩れ去った

八幡さんは、著書の「本当は誰が一番?この国の首相たち」の中で、中曽根康弘さんが総理大臣だった時に日本経済の繁栄を台無しにしたと述べています。

バブル経済は、中曽根さんが首相であった1982年~1987年の間に引起されました。

中曽根さんは外交では非常に頑張っていたのですが、経済政策については疎かにしていた面があります。

消費税導入が難しかったので、中曽根は民活路線に走った。一方、国土庁からは「四全総(第四次全国総合開発計画)」の草案が発表されて、それまでの地方分散策を否定し、世界都市としての東京への一極集中を是認するトーンが打ち出された。このふたつの動きが、東京都心部への過剰な投資を誘発し、不動産の急騰を招いた。列島改造のときのように全国津々浦々までではなかったが、投資熱は東京郊外やほかの主要都市の不動産や、東京に土地を持つ大企業の株にまで波及していった。そのころ行われた国有地の放出なども、むしろ、投資をあおる逆効果となった。
(126ページ)

中曽根さんの首相時代、中古マンションの価格は世界的には月額家賃の100倍程度が妥当とされていました。例えば、月額10万円のマンションであれば、1,000万円が適正価格ということですね。それが、東京では800ヶ月分まで高騰していたというのですから、誰がどう見たって完全なバブルです。

火が小さいうちに消しておけば大火事にならなかったのですが、残念ながらバブルは放置されました。

大蔵省が、税収増につながり財政再建になると判断したのだと八幡さんは指摘しています。経済成長で、財政再建をするというのはもっともなことですし、国民の受けも良いですね。最近でも、選挙でこのように訴える候補がいますが、バブルが過熱したときのことを思い出すと、必ずしもそうとは言えません。

バブルが始まった早い段階で消費税の導入に踏み切っていれば、あそこまで加熱しなかったかもしれませんし、国の財政再建が遅れることもなかったかもしれません。

増税なき財政再建」を国民は求めますが、それに頼りすぎると逆効果になるということです。

バブル崩壊への対策はとられなかった

中曽根さんの後を継いで、バブル絶頂期に総理大臣に就任したのが竹下登元首相です。在任期間は1987年~1989年。

竹下さんと言えば、89年に消費税を導入した総理大臣として知られています。財政再建のために消費税を導入したことは評価されますが、その率はわずか3%でした。もしも、この時に5%からスタートしていれば、バブルの過熱も少しはましだったかもしれません。

難題にねばり強く取り組み、三パーセントという低い率だが消費税の実現にこぎつけた。
(中略)
だが、経済については、バブル状態からの脱却と傷の修復が課題だったが、いずれやってくるバブル崩壊へ向けての対策は何も取らなかった。中曽根のように日本の社会や文化に大過をもたらしたわけではないが、怠惰の責めを問われるべきであろう。
(137ページ)

高速道路は金の卵を産む鶏か?

バブル崩壊は1990年です。それからの10年間は「失われた10年」と言われることがあります。

その失われた10年を取り戻すべく総理大臣になったのが、小渕恵三元首相でした。小渕さんは、見た目が地味で就任当初はあまり期待されていなかったのですが、その後、高い評価を受けるようになりました。

八幡さんは、小渕さんを経済成長の必要性を再認識させた総理大臣として高く評価しています。それまでの世論は経済成長をそれほど重要と考えていませんでしたが、それは八幡さんに言わせると「借金を抱えながら働かずにのんびりしたいというのと同義」だとのこと。

小渕さんは、宮沢喜一元総理を大蔵大臣として復帰させ、また作家の堺屋太一さんを経済企画庁長官に抜擢しました。この2人のもとで、財政の積極的な出動、ゼロ金利政策、産業競争力の強化を図ります。また、金融再生については、野党民主党の案にそのまま乗る奇策で、上手く問題を解決しました。

さらに小渕さんは、公共事業事業選択を行い、将来の資産とならない農道は減らし、将来の資産となる高速道路はやるという姿勢を見せます。

最近では、公共事業は悪だという風潮がありますが、実は景気対策だけでなく財政再建にとっても必要なのかもしれません。もしも、高速道路を国が保有し続けていたなら、将来的には高い収益をもたらす資産に化けたかもしれません。

しかし、金の卵を産む鶏になる可能性のあった高速道路は、国から切り離されてしまいました。

郵政と道路公団は財政再建にとって必要だったかもしれない

小渕さんの後、森喜朗さんを挟んで2001年に総理大臣になったのが小泉純一郎元首相でした。

小泉さんは、ズバッとわかりやすい言葉を発する総理大臣で、国民の支持率も高かったですね。だから、小泉さんの政策についても、多くの人が支持したことでしょう。

小泉さんの政策には、郵政と道路公団の民営化がありました。

僕は、民間でできることは民間でやれば良いと思っています。だから、郵政も高速道路も民営化したことには賛成でした。

しかし、先ほども述べたように高速道路は金の卵を産む鶏になるかもしれない資産であり、郵政も同様の可能性を持っていました。もしも、郵政も道路公団も国が持っていれば、今後、財政再建に役立ったかもしれません。例え、民営化したとしても国が株主の立場にあれば、郵政と道路公団が獲得した利益を配当という形で吸い上げることができます。

どちらも株式公開すれば、国は株式を売却して巨額の資金を得ることができます。しかし、そのような形での財政再建は、財産の切り売りでしかなく、何度も使える方法ではありません。


もしかしたら小泉劇場の熱狂の中、国民は、金の卵を産む鶏に育つヒヨコを醜いアヒルの子と間違えて手放した可能性があります。

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