ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

トイレットペーパー36枚重ねじゃなければ大腸菌から手を守れない

あなたは、トイレの後、お尻をトイレットペーパーで拭きますよね。お尻をどれくらい拭くかは人それぞれ違うでしょうし、その時の便の硬さなんかも影響することでしょう。

トイレの後、お尻を拭くのはなぜかと問われれば、あなたはきっと、「お尻が汚いから」と答えると思います。では、お尻を拭いているその手は汚くないのかと問われてどう答えますか?

「トイレットペーパーで拭くから、手が汚れることはありません」

きっと、このように答えるでしょう。でも、それって何か根拠があって言っているのでしょうか?本当にトイレットペーパーでお尻を拭いている手は汚くないのでしょうか?

トイレットペーパーの隙間よりも菌の方がずっと小さい

これに対する答えは、医学博士の青木皐さんの著書「ここがおかしい菌の常識」に書かれています。

まず基本的な知識として知っておかなければならないのは、便の半分以上は細菌と細菌の死骸でできているということ。食べ物のカスは半分以下です。おそらく、多くの人がほとんどすべてが食べかすと思っていたのではないでしょうか?

便の中に含まれる細菌は、腸内細菌です。腸内細菌は、人が忌み嫌う大腸菌、健康に良いとされているビフィズス菌や乳酸菌など多種多様です。大腸菌は、食中毒の原因となることから、そんなものが手についていたのでは、安心して食事もできないですよね。だから、トイレットペーパーでお尻を拭くときは、細心の注意を払って大腸菌が手につかないようにしなければいけません。

しかし、そもそも大腸菌はとても小さいので、粗い繊維でできているトイレットペーパーなんて簡単に通過してしまいます。ダブルのトイレットペーパーを使ってるから安心なんて思っているでしょうが、大腸菌は楽々とトイレットペーパーを通過してあなたの手の平にくっついてくるのです。

では、4枚重ねではどうでしょうか?これでも大腸菌は、何の苦も無く通過できます。8枚ならどうでしょうか?全然だめです。16枚ならさすがに通過できそうにないと思うでしょうが、まだまだ足りません。

トイレットペーパーを何枚重ねると大腸菌が手につかないかという疑問については、しっかりと実験が行われています。

紙でお尻を拭くときには、手でギュッと押さえつける。実験ではその圧力も計算して、紙を重ねて圧力をかけたところに人工ウンチ汁を落としていき、紙一枚ずつ菌がいるかどうか見ていく。その結果は、じつに三六枚目にしてはじめて菌の姿が見つからなかったというものだ。三六枚重ねて五回も拭くと、トイレットペーパー一個半という計算だ。(52~53ページ)

トイレットペーパー36枚重ねじゃなければ、あなたの手を大腸菌から守ることはできません。しかし、1回のトイレで、1個半もトイレットペーパーを使っていたのでは資源の無駄遣いになりますし、何よりもお金をたくさん使わなければならないのが痛手です。

菌は人間の敵ではない

では、実際にトイレの後、36枚重ねのトイレットペーパーでお尻を拭いている人が、どの程度いるでしょうか?

おそらく、100人中1人もいないでしょう。ということは、ほとんどの人が手に大腸菌をつけたまま、トイレから出てきているのです。もちろん、トイレから出る時に手を洗っているので、指や手の平に大量の大腸菌が残っているということはないでしょう。しかし、大腸菌が付いた手で蛇口をひねっているのですから、その蛇口には大腸菌が付いていますよね。手を洗う前に下着や衣服に触れるのですから、それらにもたくさん大腸菌が付いているはずです。

そう、あなたの体や身に付けているものは、大腸菌だらけなのです。

でも、毎日、大腸菌まみれになっているからといって、食中毒になってませんよね。実は、大腸菌が体についたとしても、すぐにどこかに消えてしまうのです。これは、以前に紹介したカビの常識人間の非常識という本に書いてあるのですが、人間の皮膚にはたくさんの細菌が棲んでいます。これを皮膚常在菌といいます。だから、大腸菌が皮膚についたところで、数えきれないほどの皮膚常在菌があなたの体を守ってくれているので、大腸菌が皮膚上で繁殖することはできません。皮膚常在菌たちに集団で攻撃されてしまうからです。

トイレの最中にもお尻にたくさんの大腸菌がつきますが、それらも皮膚常在菌たちがやっつけてくれるので、しばらくすれば、皮膚から大腸菌は検出されなくなります。それよりも、神経質に手や体を洗剤を使って頻繁に洗うことの方が危険です。なぜなら、体を守ってくれている皮膚常在菌たちがいなくなるからです。

皮膚表面が無菌状態になると、外からやってきた細菌たちは繁殖し放題です。もしも、それが人間にとって不都合な菌なら病気になる危険もあります。だから、何でもかんでも細菌を敵視してはいけないのです。自分の体に棲んでいるかわいい常在菌たちを育ててあげることで、自分自身も健康でいられるということを知っておく必要があります。

食中毒菌は無臭

大腸菌の話のついでに食中毒についても書いておきます。

ある食べ物を食べる時、食中毒になるかならないかの判断はどのようにしていますか?おそらく、臭くないかどうか、黄色くなっていないかどうか、酸っぱい味がしないかどうかといった基準で、食べるかどうか判断していると思います。

臭くないし、色も変化なし、そして、食べても酸っぱく感じない。

これなら、食中毒にならないと判断して、少々、日が経っているものでも口にするのではないでしょうか?しかし、これらの判断基準はすべて間違っています。実は、食中毒菌は無味無臭なのです。だから、どんなに鼻がきく人でも、味覚の鋭い人でも、視力が良い人でも、食中毒菌がその食べ物で大量に繁殖しているかどうかを見分けることは不可能なのです。臭い、黄色い、酸っぱい、これらの変化が食べ物に現れた時は、食中毒菌ではなく腐敗菌が繁殖しているのです。

でも、腐敗菌と同時に食中毒菌も繁殖しているのではないかと疑問を持つ人もいるでしょう。しかし、そのようなことは通常起こらないのです。

極論すると、どれか一つの菌が増えていると、そこではほかの菌は増えない。(中略)
腐敗菌が増えている食品では、食中毒菌は増えることができない。また逆に、食中毒菌が増えていたとすると、腐敗菌は増えられないのだ。じゃあ、両方ついていたらどうなのだ。それは先に増えたほうが勝ちで、勝ったほうがどんどん増えることになる。熾烈なサバイバルゲームだ。(84ページ)

賞味期限や消費期限が、かなり過ぎているけども、目立った変化がないという食べ物の方が、実は食中毒になる危険が高いのです。だから、臭いを嗅いだり、変色しているかどうか確かめたりすれば大丈夫なんていう人がいますが、それを信じて、無味無臭のものを食べると、ひどい目に遭うかもしれませんので注意しましょう。

また、先ほども述べましたが、腸内には多種多様な菌が生息しています。もしも、これらの菌がいなければどうなると思いますか?腸内が無菌状態であれば、あなたは、肉を食べることができません。肉を分解して腸壁から栄養を吸収できるのは、人間が持つ消化液や酵素だけでなく、腸内細菌の力があってこそなのです。

現代人は、細菌を敵視してしまいがちですが、人間は細菌なしでは生きていけない体なのです。だから、細菌を汚いとか危険だと決めつけて無菌状態にすると、いつか、しっぺ返しを食らうことになりますよ。

ここがおかしい菌の常識 (集英社文庫)

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