ウェブ1丁目図書館

ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。なお、当ブログはアフィリエイト広告を利用しています。

ブドウ糖は脳の唯一の栄養ではない!ケトン体こそ脳の主要エネルギーだ。

仕事や勉強を長時間続けていて集中力が欠けてくると、甘いものを食べれば頭が冴えると聞いたことがないでしょうか?

これは、脳がブドウ糖をエネルギーとして利用できるから、そう言われているんですね。そして、ブドウ糖は脳の唯一の栄養だとも言われています。血液脳関門という関所を脂質は通ることができず、ブドウ糖が通れるからそのように言われています。

しかし、ブドウ糖が脳の唯一の栄養だというのは完全な誤りです。実は、脂質から作り出されるケトン体こそが脳の主要なエネルギーなのです。

糖質は必須の栄養素ではない

ブドウ糖が脳にとって唯一の栄養だという誤解があるため、必ず食事から糖質を摂取しなければならないと思い込んでいる人が非常に多いです。しかし、人間は食事から糖質を摂取する必要はありません。なぜなら、自力でブドウ糖を作り出す能力を備えているからです。

医師の斎藤糧三さんは、著書の「腹いっぱい肉を食べて1週間5kg減!ケトジェニック・ダイエット」で以下の理由から糖質を食事から摂取する必要はないと述べています。

糖質は体内でブドウ糖として利用されています。このブドウ糖を体内でつくる仕組みを「糖新生」といいます。肝臓でアミノ酸(タンパク質)とグリセロール(脂質)を材料としてブドウ糖をつくるのです。糖新生は一部、腎臓でも行われています。
アミノ酸の出所はおもに筋肉。筋肉はタンパク質、すなわちアミノ酸の固まりで、機能を維持するためにつねに分解と合成をくり返す新陳代謝を行っています。その際に分解されたアミノ酸の一部を拝借し、肝臓はせっせとブドウ糖をつくるのです。
一方、グリセロールの出所は脂肪細胞。脂肪細胞に入っている中性脂肪が分解されると脂肪酸とグリセロールになります。このグリセロールからも肝臓はブドウ糖をつくるのです。
(66~67ページ)

このように糖新生というブドウ糖生産システムが体内にあるので、人間は糖質を食事から摂取する必要はないのです。糖質が必須の栄養素ではないというのは、これが理由なんですね。

糖質過剰は血管にダメージを与える

ところで人間の血液中にはブドウ糖が含まれていますが、その量はどの程度かご存知でしょうか?

毎年、定期健診を受けている方なら血糖値の基準値を見たことがあるはずです。でも、その基準値が一体何を意味しているのかなんて、ほとんどの人が意識していないでしょう。おそらく多くの人が、単に基準値の範囲内だったから問題なしと、さらっと読み流し、その意味を考えていないと思います。

血糖値は、80~100mg/dlの範囲内に保たれているのが正常です。

この基準値は、血液1デシリットル(dl)当たり血糖(ブドウ糖)が80~100ミリグラム(mg)に維持されていなければならないということです。1dlを100グラムとした場合、血液100グラムに対して血糖は0.08~0.10グラムが正常値となります。つまり、血液の0.08%~0.10%しか糖質が含まれていないのです。

人間の血液の総量は4~5リットル程度です。仮に5リットルとした場合、一人の人間の血液の中にはわずか5グラム程度しか糖質は含まれていないのです。高血糖は体全体の細胞のダメージとなるため、これだけ低いレベルで維持されなければならないんですね。

茶碗一杯のご飯には55グラムの糖質が含まれています。実に血糖の10倍程度の量です。これを10分や20で食べ終わったら、多量の糖質が血管内に流れ込み危険な状況になることは容易に想像できるでしょう。

そのため、大量の糖質が血管内に入ってきたとき、すい臓からインスリンが追加分泌されて、血糖を血管の外に出します。そして、血管の外に出た血糖は、一部は筋肉にグリコーゲンとして貯蔵されますが、多くは脂肪細胞に取り込まれ中性脂肪に変わってしまいます。

糖質をたくさん摂取すると太ると言われているのは、こういうことなのです。

糖質を補給しなくても低血糖にはならない

よく糖質をこまめに摂取しないと低血糖で倒れてしまうと言う人がいます。

しかし、これも迷信です。

すでに説明しましたが、人間は自力でブドウ糖を作り出す糖新生という能力を備えているので、糖質を摂取しなくても低血糖で倒れることはありません。低血糖で倒れるのは、糖質を摂取した後、インスリンが血糖値を下げ過ぎた時に反応性低血糖症を起こした場合や血糖降下剤を服用した場合です。

また、人間が肝臓に蓄えることができるグリコーゲン(糖質)は微々たるものでしかありません。

グリコーゲンは肝臓には70~80gほどしか蓄えられません。血糖を保つために分解され続けたとすると、およそ12時間で空っぽになります。
(69ページ)

もしも、糖質を食事から摂取しなければならないのなら、人間は12時間以内に必ず食事をし、70~80グラムの糖質を補給しなければなりません。しかし、人間は糖新生の材料となるグリセロールのもとを中性脂肪として体内に数十kgも保存しているので、わずか12時間程度の絶食では低血糖で倒れることはないのです。

脳にエネルギーを安定供給するためにケトン体を使う

肝臓に80グラム程度しか貯蔵できないグリコーゲン(糖質)が脳の主要な栄養であるはずがありません。

脳の主要なエネルギーは糖質の他にあります。それがケトン体です。

食事から糖質をカットすると、人間は貯蔵している中性脂肪を分解して使おうとします。グルカゴン、アドレナリン、成長ホルモンが分泌され中性脂肪が分解されるのです。

中性脂肪は、脂肪酸とグリセロールに分解されます。脂肪酸はエネルギーとして利用されますが、一部の脂肪酸は肝臓でケトン体になります。

ケトン体はあらゆる細胞でエネルギー源となりますが、なかでもケトン体を使うのは心臓と腎臓、そして脳の神経細胞です。
心臓も腎臓も脳も24時間ノンストップで働いています。糖質をカットすると、休みなしでフル稼働するこれらの組織にケトン体を供給するため、中性脂肪がどんどん分解されて消費します。
これが「ケトジェニック・ダイエット」と呼ばれるゆえんです。
(75ページ)

わずか12時間で枯渇するブドウ糖が脳の唯一の栄養であるはずがありません。当然、ブドウ糖が脳の主要エネルギーであるはずもないのです。

冒頭で、血液脳関門を脂質は通れないけどもブドウ糖は通れると述べました。だから、ブドウ糖こそが脳の唯一の栄養だと考えられていたのですが、実は、脂肪酸から作り出されるケトン体も血液脳関門を通れるのです。

中性脂肪は肝臓に蓄えられているブドウ糖と比較して200倍程度体内に貯蔵されています。どちらが脳の主要なエネルギーになり得るかは、ちょっと考えればわかりますよね。


ところで、ケトン体があればブドウ糖は体内に一切必要ないのでしょうか?

そのようなことはありません。

細胞に酸素を運んでいる赤血球は、ブドウ糖がなければ働けません。だから、ブドウ糖は人体にとって必要な物質であり、赤血球がしっかりと働けるようにするために肝臓で糖新生が行われているのです。それは、脳にブドウ糖を供給することが主要な理由ではないんですね。


さて、ここまで読まれた方は、もうわかったことでしょう。

ブドウ糖が脳の唯一の栄養だと言う医師や栄養士が、いかに不勉強であるかということが。