ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

カビとの共生こそが人類のあるべき姿なのかもしれない

何かと厄介者とされているカビ。

お風呂場のような湿気が多いところには、よくカビが生えるので、取り除くための手入れが大変だと嘆いている人が多いのではないでしょうか?でも、カビは、取り除こうとすればするほど、より強力に生えてくるもの。どんなに排除しても、しつこくあなたに襲いかかってきます。

でも、カビとの戦いを止めてしまえば、そのような苦労は無くなるんですよね。

カビ取り用のスプレーや洗剤は被害を拡大する

「カビ取りスプレーでもカビは退治できない」と語るのは、防衛庁技術研究所での勤務経験がある井上真由美さん。著書の「カビの常識 人間の非常識」の中で、カビとの戦いにカビ取りスプレーが無力であることを指摘しています。

カビ取りスプレーの成分は、次亜塩素酸ソーダと苛性ソーダ。それぞれ1%程度を混合させた強アルカリ性の液体です。これは漂白剤と同じです。だから、カビが生えているお風呂場のタイルにプシュッと吹き付ければ、アルカリ性を嫌うカビは死滅しますし、黒い汚れも白くピカピカにすることができます。

人間がカビとの戦いに勝利した瞬間ですね。

しかし、カビというのは、そんなに軟な生物ではありません。

きれいになったと喜んでいると、五日くらいでまた黒いカビが復活してきます。これは、目地に付着したアルカリ成分が、つぎの入浴時に湯がかかると簡単に洗い流されて中性になってしまい、そこにまた人体の汚れと石鹸分が付くので、カビは喜んでふたたび生息するのです。(46ページ)

このようになる原因は、まず、カビが人のアカだけでなく石鹸もエサにするからなんですね。石鹸がカビのエサになるなんて、ほとんどの人が知らないのではないでしょうか?石鹸を使えば、きれいになると思い込んでいる人は要注意。

さらに重要なことは、カビ取りスプレーはカビだけでなく、カビの天敵となる微生物も死滅させるということ。

カビ取りスプレーでいったんは、きれいになったお風呂場のタイルですが、入浴時に石鹸を使って体を洗えば、その石鹸がタイルに付着して、カビのエサになります。どこからともなくやって来たカビが、石鹸をエサに増殖を開始した時には、天敵となる微生物がいないので、以前よりも強力に繁殖するのです。

これが、カビと戦うから余計にカビが増殖する理由です。カビが増殖しないようにするためには、カビと戦わないこと。入浴後は、タイルを熱いお湯でしっかり流して、喚起すること。そうやって予防するしかありません。また、カビが生えた時には、安易にカビ取りスプレーを使わずにプロに任せた方が良いとも井上さんは述べています。

水虫もカビと同じように戦ったら負け

カビと同じように水虫とも戦ってはいけません。水虫薬は、水虫を退治できる成分が入っていますが、それは、皮膚に棲みついて人間を外敵から守っている常在菌をも殺してしまいます。

だから、カビの時と同じように水虫をいったんは薬でやっつけることができたとしても、常在菌も薬でやられているので、再び水虫ができた時には、以前よりもひどくなってしまうのです。

井上さんは、水虫を退治するために様々な薬を使って実験をしましたが、被験者の皮膚がかぶれやすいうこともあり、靴の殺菌に薬を使うようにしました。

また、ヨーロッパ人は1日中靴を履いているのに水虫にならないという噂を聞きつけ、試しにドイツ製の靴を買って履いてみたところ、まったく蒸れなかったということです。靴全体が動物の皮革でできているので、蒸れないんですね。

かくいう井上さんも、水虫には40年以上悩まされていたとのこと。でも、ドイツ製の靴を履きだしてからは、何もしなくても水虫は治り、その後は、常在菌を良い状態に保つために足をあまり洗わないようにしているということです。

足をあまり神経質に洗わない-こうしたやり方を、いままで一00人くらいの人に伝授し、足が清潔になったと喜ばれています。(中略)殺菌する相手は靴下と靴で、足ではないことを理解してください。(113~114ページ)

アルミニウムもプラスチックもカビにやられる

アルミニウムやプラスチックには、カビが生えないと思い込んでいる人が多いと思いますが、それも大きな間違いです。実は、アルミニウムやプラスチックもカビにやられてしまうんですね。

アルミニウムにカビが生えるということは、1960年にわかっています。

井上さんは、航空自衛隊ジェット機のアルミニウム合金製燃料タンクの底に小さな孔があいてジェット燃料が漏れ出す事故の調査をしていました。その結果、カビがアルミニウムを食べることがわかったのです。

この研究結果を軽金属学会において発表したところ、専門の大学教授が「そんなことは絶対にありえない」と怖い顔で発言し、研究結果が間違っていると反論されたそうです。現代でもアルミニウムにカビが生えることを知らない人が多いのは、こういった経緯があるからかもしれませんね。

同じようにプラスチックにもカビは生えますし、レンズやガラスにだってカビは生えます。こうやって見ていくと、どのようなものにでもカビが生える可能性がありそうですね。

人類はカビとともに生きている

何かとカビを毛嫌いする人類ですが、もっとカビと仲良く付き合う必要があるのではないでしょうか?

たとえば和名を枯草菌というバチルス・サブチリスは、食品を腐敗させる菌の代表ですが、実は納豆菌も枯草菌の一種です。納豆が健康に良い食品として親しまれてい事を考えると、細菌を毛嫌いする理由はありません。

食中毒の原因とされる大腸菌にも、腸内でビタミンB群を合成するものもいますから、一概に危険な細菌として排除すべきではないですね。他にも農薬に含まれる有毒な化学物質を無毒化する細菌の存在も確認されており、人類は、そういった細菌たちに助けられている面があることを知っておく必要があるでしょう。

また、多くの食中毒患者を出したアカカビ病の原因はフザリウム菌ですが、種類によっては菌体内に良質のタンパク質などを豊富に含むものもいるそうです。このフザリウム菌を24時間培養すると、菌体500キログラムが10トンに増殖するということです。

フザリウム菌の繁殖力の強さを考えると、将来の穀物栽培の行きづまりから起こる食糧危機を乗り越える食物となる可能性がありますね。

これからは、もっとカビのことを知り、どのように共生するべきかを考えていくことが人類には必要なのではないでしょうか。

カビの常識 人間の非常識 (平凡社新書)

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