ウェブ1丁目図書館

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女性は鉄分不足を自覚すればもっときれいになる。赤ちゃんの健康のためにも鉄を欠かすべからず。

50歳未満の日本人女性の22.3%、妊婦の30~40%。この数字が何を意味しているかご存知でしょうか?

実は、この数字は日本人女性の貧血の割合を示したものです。さらに深く掘り下げると、貧血と診断された日本人女性の25.2%、つまり全体の5.6%が重度の貧血です。日本人女性の5人に1人が貧血なのですから、日本に住んでいる女性なら誰だって貧血になる危険性があると言えるでしょう。

また、妊婦の貧血の割合は、先進国の平均が18%、発展途上国の平均が56%となっています。日本人の妊婦のうち30~40%が貧血なのですから、どちらかというと発展途上国に近い数値です。

いったい、日本人女性はなぜこんなに貧血になりやすいのでしょうか?

鉄不足がもたらす酸欠

貧血には、様々な原因がありますが、日本人女性の貧血に多く見られるのは鉄不足から起こる鉄欠乏性貧血です。

医師の山本佳奈さんは、著書の「貧血大国・日本」で、先進国が食物に鉄を添加する鉄不足対策を行っており、中国やベトナムでも学校給食で鉄を添加した醤油を積極的に使用していることを紹介しています。しかし、我が国は鉄不足に対して無策だとのこと。

鉄は、赤血球に含まれるヘモグロビンに多く含まれています。他にもミオグロビン、フェリチン、血清鉄など、さまざまな形で人体には鉄が存在しています。赤血球は体内の酸素運搬を行っている細胞ですが、鉄がなければ体の隅々まで酸素を供給することができません。そう、鉄不足は、すなわち酸素不足をもたらすのです。めまいや立ちくらみは、脳細胞が酸欠状態になって起こりますから、頻繁にめまいがするという方は鉄不足を疑うべきです。

脳は、人体の中でもっとも多くの酸素を消費する臓器です。脳の重さは体重の2%にすぎませんが、酸素の消費量は全身の四分の一にも及びます。しかも、脳には筋肉がないので、酸素を蓄えることができず、運ばれてきた酸素をすぐさま使い果たしてしまいます。そのため、酸素が十分に供給されなければ、容易に酸素不足に陥ってしまうのです。
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他にも鉄は、アデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギーの産生、活性酸素の抑制、ドーパミンセロトニンなどの神経伝達物質をつくる補酵素としても使われます。したがって、鉄が不足すれば、エネルギー不足で疲れやすい、活性酸素のダメージで老ける、精神がリラックスしにくいといった不都合が生じることを容易に想像できるでしょう。

女性が鉄不足を解消することは、より若くよりきれいに体を保つために大切なことなのです。

女性は鉄を失いやすい

女性は男性と比較して、鉄を失いやすい特徴があります。その一つの理由は月経です。月経時には出血を伴いますが、この時に多くの鉄を失います。だから、女性は男性よりも意識的に鉄を摂取しなければなりません。

女性が鉄不足に陥るもう一つの理由は妊娠出産です。

女性は妊娠すると胎児に栄養を送らなければなりません。もちろん胎児への酸素供給もしなければなりません。胎児にしっかりと栄養を送り届けるためには、より多くの血液が必要になりますから、妊婦の鉄需要も増大します。だから、妊婦は、妊娠前よりも積極的に鉄やその他の栄養素を摂取するように心掛けなければ、お腹の中の赤ちゃんを育てることができません。何より、妊婦自身が鉄不足に陥る危険がありますから、妊娠中は特に鉄の補給を意識する必要があります。

ところが、冒頭でも述べたように妊婦の30~40%が貧血です。これでは元気な赤ちゃんを産むのは難しいでしょう。

第二次世界大戦末期、オランダはナチスドイツの封鎖により食糧難に陥り、多くの母親が栄養不足に悩むこととなりました。そして、その後の研究で、栄養不足に悩まされた母親から生まれた子どもの多くが、成人後に肥満や糖尿病、高血圧を発症したことが判明したのです。
この事実は、母体内の環境が胎児に影響することを示唆します。
このことを従来の遺伝学で説明するのは困難です。人の体細胞(生殖細胞以外の細胞)の遺伝子配列は決まっていて、その生涯の間に変化することはないからです。
ところが、オランダの研究では、母体内の環境要因が、何十年も経ってから影響していることになります。
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妊婦の栄養状態が、生まれてくる赤ちゃんの生涯の健康を左右すると言っても過言ではないでしょう。

赤ちゃんは生まれて半年後に鉄不足に陥る

赤ちゃんは、お母さんから鉄をもらって生まれてきます。人間は肝臓や脾臓に貯蔵鉄(フェリチン)として鉄を蓄えていますが、赤ちゃんの貯蔵鉄は約4ヶ月分です。

しかし、母親が貧血であれば、赤ちゃんも貯蔵鉄が少なくなるので貧血になってしまいます。そうならないようにするためには、妊娠中もしっかりと鉄を摂取しなければなりません。もしも、妊婦が鉄欠乏性貧血と診断されれば、鉄剤が処方されます。ほとんどの妊婦は鉄剤を服用し続ければ鉄欠乏性貧血を改善できるのですが、妊娠中は悪阻もあり鉄剤を飲み続けるのが厳しいとのこと。

だから、女性は妊娠する前から、意識的に鉄が多く含まれた食品を食べるように心掛けなければなりません。

また、貧血のお母さんが赤ちゃんを母乳で育てていると、半年から1年で赤ちゃんも鉄欠乏性貧血になるそうです。赤ちゃんの鉄欠乏性貧血を防ぐためには、離乳食を工夫して鉄が多く含まれている食べ物を食べさせる必要があります。

ヘム鉄を多く含む食品は効率的に鉄分補給できる

鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄があり、体への吸収率が高いのはヘム鉄です。ヘム鉄の吸収率は約15~25%ですが、非ヘム鉄だと2~5%しか吸収できません。人間は毎日1mgの鉄を失いますから、ヘム鉄だと4~7mg、非ヘム鉄だと20~50mg摂取する必要があります。したがって、効率的に鉄を摂取するためには、ヘム鉄を優先的に摂取したいところです。

ヘム鉄が多く含まれている食品は、肉や魚などの動物性食品です。一方の非ヘム鉄が多く含まれているのは野菜などの植物性食品です。なので、動物性食品の方が植物性食品よりも鉄摂取の観点からは優れています。動物性食品の中でも、赤味の肉や魚に比較的多く鉄が含まれています。中学生や高校生の娘さんがいる家庭では、肉や魚をしっかりと食べさせてあげるべきです。

非ヘム鉄は、ビタミンCや動物性タンパク質と一緒に食べると吸収率が高まります。反対に食物繊維やフィチン酸は鉄の吸収を阻害します。どちらも穀物や豆類に多く含まれていますから、鉄不足を防ぐためには食べ過ぎないようにすべきです。

山本さんは、非ヘム鉄を多く含む食品として青のりを例に挙げています。青のりには100グラム当たり77mgの鉄が含まれていますから、食事の時におかずにちょっと振りかけるだけで手軽に鉄を摂取できます。ついでにレモン汁などをかけてビタミンCも加えれば、多少なりとも吸収率を高められるでしょう。


年ごろの女性が、体型を気にしてダイエットをするのは仕方ないのかもしれません。しかし、元気な赤ちゃんを産むためには、鉄が不足するようなダイエットをすべきではありません。ダイエットをする時は、鉄、特にヘム鉄を多く含んだ食品を優先的に食べるようにして鉄不足にならないようにすべきです。

「多くの日本の女性の活力を低下させている鉄欠乏性貧血をほったらかして、他の血液疾患の研究ばかりしてきた医師にも責任がある」
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これは、ある医師が語った言葉です。

国が、女性の社会参画をすすめたり、元気な赤ちゃんを女性に産んでもらおうと思うなら、もっと鉄の摂取を啓蒙していかなければなりません。

まさに「鉄は国家なり」なのです。