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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

納豆菌が水質浄化。発展途上国の水質問題を解決するのはネバネバパワーだ。

生物

日本の発酵食品を代表するものに納豆があります。

鼻にツンと来る匂いとネバネバが特徴的な納豆は、個性が強いため、好んで食べる人と近づけるのも勘弁して欲しいと嫌がる人の両極端な扱われ方をされますね。僕は、納豆が好きなので毎日のように食べています。

最近では、ヘルシーなイメージが定着してきたため、美容のために若い女性の方も納豆をよく食べるようになっています。そして、健康や美容に良い納豆は、実は環境問題を解決するすごい力を持っており、知らないところで活躍しているんですよね。

7千年前には納豆があった?

微生物学に詳しい中西貴之さんの著書「人を助けるへんな細菌すごい細菌」には、納豆を作り出している納豆菌について、興味深いことが記述されています。

納豆の原料は大豆と納豆菌です。

蒸すか茹でるかした大豆に納豆菌を振り掛け、40度前後の温度を保って1日ほど発酵させると納豆ができあがります。できあがった納豆は、表面が白っぽくなっており、お箸でかき混ぜると、あのネバネバが発酵した大豆を包み込みます。

納豆の起源は、中国から伝わったとも言われていますし、源義家が東北に出陣する際、茹でた大豆を藁の袋に入れて馬に運ばせていたら偶然発酵が進んでできたとも言われています。詳しい起源はわかっていないようですが、遺伝子解析の結果、7千年前には同じ菌だったことがわかっていますので、納豆には、かなり長い歴史があります。

ネバネバはライバルに栄養を持って行かれないようにするため

最初に納豆を食べた人は、きっと度胸があったんでしょうね。普通の人なら、あのネバネバを見たら、腐って食べれないと判断し捨ててしまうはずです。そう考えると、源義家が日本で最初に納豆を食べたというのもうなずける話です。

ところで、あの納豆のネバネバは一体何なのでしょうか?

大豆表面は納豆菌と粘性物質で覆われています。この粘性物質は納豆菌が分泌したものですが、その成分はうまみ成分のグルタミン酸が鎖のように細長くつながったものと、砂糖の成分の一つであるフラクトースが集まってできたフラクタンの、二つの成分からできています。グルタミン酸はネバネバの本体であると同時に、納豆のおいしさの源でもあります。フラクタンには味はありませんが、ネバネバを安定化させる役目をになっています。(103ページ)

つまり、納豆がおいしいのは、あのネバネバがあるからなんですね。グルタミン酸アミノ酸の一種ですが、うま味成分として知られており、味の素の原料にもなっています。

おもしろいことに納豆菌が活発に分裂しているときは、あのネバネバは作られないそうです。

他の細菌が大豆に付着して増殖を始めると、自分の周辺が細菌だらけになり栄養を持って行かれてしまいます。これに対抗する納豆菌たちの手段がネバネバ生成作戦なのです。

納豆菌は、自分の周辺が混雑して栄養分が減り始めると、必要な栄養をネバネバに変換して蓄えます。やがて栄養分がなくなると、必要な分ずつネバネバを分解し、それを栄養源として生育を続けます。このネバネバは、納豆菌以外の細菌は利用することができないため、限られた栄養分をいち早く自分だけが使える形に変換して確保するという、生き残り作戦の結果なのです。(104~105ページ)

500グラムのネバネバが100トンの水を浄化

さて、冒頭で述べた納豆が持つ環境問題を解決するすごい力を紹介します。

納豆菌が作り出したネバネバ物質には、水質浄化作用があります。汚れた水の中にネバネバを入れると汚染物質を吸着して沈殿し、水の透明度を高めるんですね。その浄水能力は、なんとネバネバ500グラムで100トンもの水をきれいすることができるのです。

すでに実用化もされており、神社仏閣などの人工池や堀で、納豆菌が作り出したネバネバの水質浄化方法が利用されているとのこと。

この水質浄化能力を日本だけで使うのは非常にもったいないことです。発展途上国では、まだまだ濁った水を飲んでいる人たちがたくさんいます。そういった地域にネバネバを持っていき、水の中に入れれば、今よりもずっときれいな水を現地の人たちは飲めるはずです。また、納豆の製造方法も教えれば、食糧問題の解決にも貢献することでしょう。

他にもネバネバには、消臭、カビ取り、植物害虫防除などの機能もあるということですから、納豆菌を活用しない手はないですね。

細菌たちは人を助けてくれる

細菌と聞くと、すぐに「病気」を連想する人が多いですが、実は人間だけでなく様々な生き物は細菌なくして生きていくことはできません。

僕たちの皮膚には、皮膚常在菌がいて外敵から守ってくれていますし、腸の中には大腸菌や乳酸菌などの腸内常在菌がいて、栄養補給のために活躍しています。農薬を使用して育てられた野菜だって、微生物が農薬を浄化してくれていますし、農薬が河川に流れ出しても、そこに棲む細菌たちが浄化してくれています。

それなのに人間は、細菌を毛嫌いして何かと除菌、抗菌、殺菌に努めて、彼らを虐待しています。

病気の原因となる細菌もいますが、それらが体内に侵入するのを防いでくれているのも、また体に棲む細菌たちなのです。それを知らず、トイレに行った後は、石鹸やハンドソープを使ってしっかりと洗わないと汚いと言って、両手をごしごしこすり、常在菌たちを洗面所に流しています。

無菌状態になった手は、食中毒菌などの通過菌が容易に繁殖しやすい環境になっていることを知っている人は少ないはず。これも洗剤メーカーが垂れ流すCMにマインドコントロールされた結果なのでしょうね。


そもそもトイレでお尻を拭くとき、トイレットペーパーを36枚重ねにしなければ大腸菌が手につくことを防ぐことなんてできません。それを知っていれば、潔癖症の人がどんなに清潔にしようとしても無駄なことだとわかるでしょう。排便後のお尻には、数えきれないほどの大腸菌が付着していますが、そんなものは放置しておけば、そのうち皮膚常在菌に駆逐されて全滅します。

また、体についた細菌はシャワーで軽く流すだけでも簡単に落ちますし、湯船に浸かれば皮膚常在菌もまとめて流れます。


現代日本人は、少々不潔なくらいが最も清潔で健康的だということを認識した方が良いでしょう。そして、それこそが、本当の環境対策になるのです。

人を助けるへんな細菌すごい細菌―ココまで進んだ細菌利用 (知りたい!サイエンス)

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