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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

経済発展に必要な考え方は比較優位。見守ることと貿易障壁をなくすことが各国政治家の仕事。

経済

自国の経済発展に必要なこと。

各国の政治家や経済学者が、日々考えていることの一つがこれではないでしょうか?地方議員の場合は、国を地域と読み替えて我が町の経済発展と言うでしょう。

経済発展には、様々な要素があります。金利、為替、税金などいろいろと思いつくでしょうが、僕が最も重要だと考えるのは比較優位です。前回の記事で紹介した伊藤元重さんの著書「はじめての経済学(上)」でも、リカードが唱えた比較優位について少し解説されていました。比較優位についてもっと詳しく知りたいと思うなら、下巻も一緒に読んでおくと良いでしょう。

与えられた環境で最善の努力をする

比較優位は、一言で言うと自国の強みに特化して経済活動を行うということです。

  • 製造業が強いのであれば製造業に特化する
  • 農業が強いのであれば農業に特化する
  • サービス業が強いのであればサービス業に特化する


これが比較優位です。いたって単純な考え方ですね。

でも、この単純な考え方がもっともな重要なわけです。自国の強みに特化するということは、裏を返せば、他の産業はどこかに弱点があって、他国と競争しても負けることがわかっているということです。

財やサービスの生産には、労働、資本、土地などの生産資源が必要となります。しかし、自国で生産に必要な資源をすべて賄えない国はたくさんあります。日本だって、技術や労働力は豊富にありますが、石油などの天然資源が乏しいので、原材料をすべて国内で調達することはできませんよね。だから、他国からそれらを輸入しなければなりません。

反対にアフリカや中東の国々は、鉱物資源を潤沢に有しているので、それを輸出して得たお金で、工業製品を輸入し利用しています。

日本の場合もアフリカや中東の国々の場合も、弱い部分は他国に補ってもらい、強い部分で他国を助けているということですね。


他の国だって、必ず弱点を抱えています。だから、その弱点は別の国に補ってもらい、自分たちは与えられた環境の中で最善を尽くす、すなわち強みに特化して活動するという選択を採ることになります。

比較優位は自由貿易がカギ

強みを生かし、弱点を補ってもらう。

そのために必要なことは何でしょうか?それは各国が風通しを良くすることです。

それぞれの国の得意・不得意、つまり比較優位のパターンを反映して、それぞれの国が得意な産業に生産を集中していくことが必要となります。ただ、政策担当者が計画経済的にそうした生産パターンを実現しようとしなくても、ただ貿易障壁を撤廃し、自由に貿易ができるようにしてあげれば、市場メカニズムに導かれて、結果的に各国は自分にとって得意な産業に生産を集中させることになります。その結果、世界全体としてみると、より多くの生産がより効率的な資源配分の下で実現することになります。(183~184ページ)

各国の政治家があれこれと経済に口を挟むのではなく、事業者に任せておけば、自然と比較優位ができあがっていくということです。つまり、各国の政治家は自由貿易を奨励し、関税などの貿易障壁を取り払っていくことが仕事であり、他国の財やサービスが自国に流れてきやすい環境を整えること、あるいは閉鎖的な国の貿易障壁を取り除くことと言えます。

絶対的優位ではなく相対的優位

比較優位と言う言葉を聞くと、何かで1番になることを想像するでしょうが、ちょっと違います。

大切なことは、先進国と発展途上国の間の絶対的な生産性や競争力の違いではなく、それぞれの国の異なった産業の間での相対的な生産性の違いを理解することです。(188ページ)

例えば、自動車と牛肉の生産が得意な国があったとしましょう。どちらも世界で1番の品質です。しかし、自動車は高利益率であるのに対して牛肉は低利益率だったとします。この場合、どちらも絶対的に1位なのだから、両方の生産を続けていくという選択をするのはよくありません。

なぜなら、低利益率の牛肉生産に労働力や資本を割くよりも、高利益率の自動車にそれらを振り向けて輸出した方が、儲けが多くなるからです。

反対に自動車も牛肉も品質はそれほど良くないけども、牛肉については安くで生産できる国があったとしましょう。この場合、自動車の生産から完全撤退し、他国よりも安いという優位性を活かして牛肉生産を行い、輸出した方が、その国全体で見ると儲けが多くなります。


相対的優位は、政治家が自国の産業だけを見ていては気づかないでしょう。だから、国際的な視点で経済を見るようにして欲しいのですが、それはなかなか難しいですね。

でも、個々の事業者の場合は、目の前の仕事をしていれば自然と比較優位に気づいていきます。自分が造った自動車は全然売れないのに、隣の牧場が牛肉を海外にたくさん輸出して儲けているのを見れば、自然と自動車工場をたたんで牧場経営に乗り出していくはずです。

このように考えれば、各国の政治家がすべきことは、事業者の活動を見守るということではないでしょうか?

経済学の入門書にはコンサルタントが言ってることが書いてある

比較優位という言葉は、ビジネス書でよく見かける「選択と集中」と同じです。

これは、自社ができることの中から強みを見つけ出して、それに経営資源を集中させれば、企業活動はうまく行くということですね。

また、ライフハック、成功法則、自己啓発を扱った書籍では、目標(ゴール)を設定してそこから逆算的に計画を立てていけば物事がうまく行くと書かれていたりします。これも比較優位という言葉を知っていれば、わざわざそういった本を読む必要はありません。

他社と比較して自社の強みを見つければ、その強みを生かすためにどうやって活動していけば良いか計画を立てて実行するはずです。


「××コンサルタント」という肩書を持っている人が書いた本の多くは、経済学や経営学の入門書に書いてあることを別の言葉に置き換えただけです。そんな本を読んで「目からうろこが落ちた」という感想が出る人は、経済学の入門書を読むことをおすすめします。

ただ、「なぜ△△は○○なのか」みたいなタイトルが付いた入門書は変化球を投げてくることが多いので、「××学入門」のように直球ど真ん中のタイトルがついている入門書を読んだ方が良いですね。

とは言いながら、僕も以前は「××コンサルタント」が書いたビジネス書をよく読んでいました。その時は、「斬新だ」とか「自分には思いつかない発想だ」なんて思ったりもしました。今思えば、高校の政治経済の教科書や大学1年生の講義で使う入門書に載ってることばかりで、何も目新しいことなんてありませんでしたね。

はじめての経済学〈下〉 (日経文庫)

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