ウェブ1丁目図書館

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経済発展は地球の環境収容力に依存する

現代の世界の人口は70億人です。近い将来、80億人に達すると予想されています。

わずか100年そこそこの期間で、人口は急激に増加しました。人口増加の理由は様々あり、食料生産量の増加や医学の発達などが主なものとされています。

人間に限らず、生物は増加する個体群もあれば減少する個体群もあります。個体群は、生命の誕生によって増加し、死によって減少します。そして、両者の差が純増であれば乗算的に個体群中の個体数は増えていきます。

個体数の増加は預金利息の複利計算と同じ

個体群中の個体数の増加は、足し算的(加算的)なものではありません。つまり、1匹が2匹になり、2匹が3匹になり、3匹が4匹になるというように直線的な増加とはならないのです。

講談社の「カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第5巻 生態学」では、個体群の増加は、銀行口座が複利で増えていくのと同じだと解説されています。すなわち、利子が利子を生むように生物も子が子を生むので、個体数は掛け算的(乗算的)に増加するのです。

個体群中の個体数は、個体が子を生むことで増加し、個体が死ぬことで減少します。これを定式化すると以下のようになります。


将来のある時点における個体群中の個体数=現在の個体数+生まれた個体数-死んだ個体数


この式を以下のように変形すると、個体数の増加率rがわかります。


個体数の増加率r=(生まれた個体数-死んだ個体数)/現在の個体数


rは、個体数の純増率を意味します。つまり、預金で例えると、毎年、預金残高にrを乗じた分だけ利息を受け取れ、元本と利息を合わせた合計がその時の預金残高となるのと同じです。したがって、rが常に一定であれば、1年後の個体群中の個体数は現在の個体数の合計に(1+r)を乗じた数になります。例えば、現在の個体数が100でrが10%だった場合、1年後の個体数は110に増えます。


1年後の個体数=100×(1+0.1)=110


生活史トレードオフ

生物が生きていくためには、物質とエネルギーの獲得が必要です。生物は、恒常性(ホメオスタシス)を保つために獲得した物質とエネルギーを使いますが、それには物理的な制約があります。

ホメオスタシスの維持は、ストレスの多い環境では穏和な環境にくらべて、維持に費やす資源の量は多くなる。例えば、砂漠における環境が暑ければ暑いほど、昼行性のトカゲは体温を致死的レベル以下に保つために涼しい隠れ家で時間を費やさなければならない。このため、食物を探す時間は短くなってしまう。
(75~76ページ)

反対に生物が個体維持に必要な量以上の物質を獲得できれば、余剰を他に配分できます。そして、獲得する余剰資源が多いほど、平均妊性、平均生存率、一個体あたりの成長率は増加します。

しかし、生物は常に余剰資源を獲得できるわけではありません。得られた資源の中で、どうにかやりくりする必要があります。

体の成長に多くの資源を投入すると、防御への投資が疎かになります。そうすると生存率が下がります。早期に繁殖する生物は、体の成長が遅く、成体は小さなサイズになりやすいです。繁殖に多くの資源を投資する生物は、成体維持への投資が不足することから生存率が低くなることが多いです。

このような成長、繁殖、生存のあいだの負の関係を生活史トレードオフと言います。

食糧供給は加算的にしか増えない

生物が獲得できる資源に限りがある以上、生活史トレードオフから逃げることは難しいでしょう。どの生物も今獲得できる資源内でしか生活することはできません。

ある個体群での個体数の増加は、個体間での資源の奪い合いを引き起こします。個体数が乗算的に増加していくと言っても、環境が個体数の増加を許容しきれなくなれば、個体数の増加は頭打ちになります。それどころか、個体数は減少し始めます。

生物が生きていくためには食料が必要です。人間は食料を生産できるので、人口が増えても食料生産量を増やすことで飢餓を乗り越えれると思いがちです。しかし、食糧供給は加算的にしか増えないことを忘れてはなりません。

マルサスは、人口は乗算的に増加するのに、食糧供給は加算的にしか増加しないことを指摘した。彼は食糧不足により人口増加は限界をむかえ、19世紀末までにはピークを迎えるだろうと推測した。もちろん、マルサスは医学上の発見と緑の革命の効果は予想すべくもなかった。
(90ページ)

マルサスの推測とは反対に人口は増加していきました。これは、科学技術の発展により死亡率の低下と食糧生産量が増加したからです。しかし、食糧生産量を増やしても、人間が食べて減る部分があるので、食糧が乗算的に増加することは考えられません。人口増加率以上の食糧生産量の増加は、何らかの技術の発展がなければ難しいでしょう。


現代の科学技術を前提にすれば、食糧生産量の増加率以上に人口を増やすと、やがては地球の環境収容力が限界に達し人口は減少し始めます。この場合、人類間での資源の奪い合いが起こるでしょうから、飢餓で苦しむ人の数が増えるに違いありません。

現在の日本の人口は約1億2千万人、食料自給率は約40%です。つまり5千万人分の食料は国内生産で賄えていますが、7千万人分は外から買ってこなければなりません。すでに日本の環境収容力は限界を超えているのではないでしょうか?

人口が増えれば景気が良くなりデフレから脱却できると言われています。国内で生産できる食料が増えないのに人口だけが増えれば、食料を買うために外に流れる貨幣量が増加します。それは、国内の貨幣流通量を減らす原因となるのですから、デフレを加速させるはずです。

人間の経済活動は、地球の環境収容力に依存していることを忘れてはなりません。

カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第5巻 生態学 (ブルーバックス)

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