ウェブ1丁目図書館

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グルコースからのエネルギー獲得には解糖系、細胞呼吸、発酵の3つの代謝経路がある

自動車が走るためにはガソリンなどの燃料が必要です。電化製品を使う時にも電力が必要です。飛行機が空を飛ぶためにも船が海を進むためにも、何かしらの燃料が必要です。

このように何かを動かすためには、何らかのエネルギー源が必要になります。

我々人間も、イヌやネコなどの動物も、植物も、やはり活動するためにエネルギーを必要とします。でも、動物は自動車を動かすためのガソリンを飲むこともありませんし、電化製品のように体のどこかからプラグをコンセントに挿すためのコードが出ているわけでもありません。これら生物が、自動車のガソリンに相当するものとしてエネルギー利用しているのは、アデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるものです。

例えば、人間などの動物は、グルコースブドウ糖)、タンパク質、脂肪酸から化学エネルギーを取り出し、それをATPに格納できます。ATPに格納された化学エネルギーは、ATPからリン酸基(P)が1個外れた時に放出されます。そのエネルギーを使って、動物は様々な活動を行っているのです。

グルコースからのエネルギー獲得は解糖系から始まる

生物のエネルギー獲得に関しては、よくグルコースを用いて説明されます。講談社から出版されている「カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学」では、グルコースからのエネルギー獲得の仕組みが図を使ってわかりやすく説明されています。でも、高校時代に生物を選択していなかった方や生物の授業が嫌いでほとんど覚えていないという方には、ちょっと難しいと思います。

なので、ここでは、もっと簡単にグルコースからのエネルギー獲得過程を説明します。でも、図は一切使いません。作るのが面倒なので。

グルコースからのエネルギー獲得には、解糖系、細胞呼吸、発酵の3つの代謝経路が関わっています。グルコースからのエネルギー獲得の最初の代謝経路は細胞質内の解糖系です。

解糖系がすべての細胞でグルコース代謝を開始し、3炭素産物であるピルビン酸を2分子産生する。このとき、グルコースに保存されているエネルギーのうち少量が使用可能な形で獲得される。解糖系は酸素を利用しない。
(203ページ)

解糖系は、10段階の反応で構成されますが、前半部分はエネルギーを投資する段階です。つまり、前半部分ではエネルギー収支がマイナスになります。前半部分で投資されるATPは2分子です。グルコースは、前半の反応でジヒドロキシアセトンリン酸(DAP)とグリセルアルデヒド3-リン酸(G3P)に分解されます。

解糖系の後半部分では、投資した2分子のATPを回収するための反応が起こります。すなわちエネルギー獲得段階です。後半の反応では、DAPとG3Pから4分子のATP、2分子のピルビン酸、2分子の電子伝達体ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの還元型「NADH+H⁺」が産生されます。

したがって、解糖系でのATP獲得量は、2分子の投資で4分子を得たので正味2分子です。

ミトコンドリア内で行われる細胞呼吸

細胞内には、エネルギー工場のミトコンドリアがあります。ミトコンドリアは、解糖系で得られた産物から酸素を使って大量のATPを作り出す細胞呼吸の場です。

細胞呼吸は環境中のO₂を利用し(好気的代謝)、一連の代謝経路を通してピルビン酸分子を2分子のCO₂にまで完全に変換する。その過程で、ピルビン酸の共有結合に保存されている多量のエネルギーが放出されADPとリン酸からのATP合成に用いられる。
(204ページ)

ミトコンドリアが、解糖系から受け取ったピルビン酸は、酸化されてアセチルCoAとなります。また、この過程でNADH+H⁺が1分子合成されます。アセチルCoAはオキサロ酢酸とくっついてクエン酸となり、クエン酸はその後7段階の反応経路を通ってオキサロ酢酸となります。そして、再びアセチルCoAと結びつきクエン酸となり、7段階の反応を経てオキサロ酢酸になるという反応を繰り返します。この繰り返しをクエン酸回路と呼びます。

クエン酸回路が1回転して得られる産物は、1分子のATP、3分子のNADH+H⁺、1分子の電子伝達体のフラビンアデニンジヌクレオチド(FADH₂)です。ピルビン酸は解糖系から2分子受け取っているので、クエン酸回路は2回転します。したがって、2分子のATP、6分子のNADH+H⁺、2分子のFADH₂が獲得されることになります。

クエン酸回路2回転でも、まだ解糖系で得られたATPと合計して4分子のATPしか獲得できていません。でも、細胞呼吸はここからが本番です。

解糖系で得られた2分子のNADH+H⁺、2回のピルビン酸酸化で得られた2分子のNADH+H⁺、クエン酸回路2回転で得られた6分子のNADH+H⁺と2分子のFADH₂は、電子伝達鎖に送られ、酸素を利用して28分子のATPになります。なお、1分子のNADH+H⁺からは2.5分子のATP、1分子のFADH₂からは1.5分子のATPが生み出されます。

したがって、解糖系から細胞呼吸を通して得られるATPは合計32分子となります。ただし、NADH+H⁺とFADH₂から得られるATP量には諸説あることに注意してください。

なお、酸素(O₂)を利用してグルコース(C₆H₁₂O₆)からATPを合成する過程では、6分子の二酸化炭素(CO₂)と6分子の水(H₂O)が発生します。式にすると以下の通りです。

C₆H₁₂O₆+6O₂→6CO₂+6H₂O+32ATP

酸素が使えない時はピルビン酸を発酵する

もしも、酸素が使えない状態では、ピルビン酸はどうなるのでしょうか?

酸素が使えない状態なんてあるのかと思うでしょうが、筋トレなどの無酸素運動では酸素を使えない状態でATPを獲得します。

発酵はO₂を利用しない(嫌気的代謝)。発酵によりピルビン酸は乳酸かエチルアルコールエタノール)に変換される。これらは未だ比較的エネルギーに富む分子である。グルコースの分解は不完全なので、発酵によって放出されるエネルギーは細胞呼吸によって放出されるエネルギーに比べてはるかに小さい。
(204ページ)

盛んに筋収縮が起こると、筋組織に十分な酸素が送られません。しかし、この場合でも運動を続けるためにはATPが必要です。そこで、解糖系で得られたピルビン酸を発酵して乳酸に変換します。この時、獲得されるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの酸化型であるNAD⁺は、解糖系のエネルギー獲得段階で必要となります。つまり、発酵でNAD⁺が得られることで解糖系が続けられるのです。

しかし、乳酸発酵が継続すると、乳酸が蓄積する問題が発生し、筋けいれんを起こすことがあります。

長鎖脂肪酸からは100分子以上のATPを獲得できる

「カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学」では、グルコースからのエネルギー獲得しか説明されていません。

なので、脂肪酸からのエネルギー獲得について簡単に説明しておきます。

脂肪酸からは、解糖系を経由せずにミトコンドリアでATPが合成されます。ミトコンドリアでは脂肪酸のβ酸化が行われてアセチルCoAが作られます。アセチルCoAからの反応はグルコースクエン酸回路以下の反応と同じです。ただし、1分子の脂肪酸から得られるATP量はグルコースと異なります。パルミチン酸やステアリン酸といった長鎖脂肪酸1分子から得られるATPは、なんと100分子を超えます。

実は、グルコースよりも脂肪酸の方がエネルギー源として優れているんですね。

カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学 (ブルーバックス)

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