ウェブ1丁目図書館

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地方小都市での商売で成功するためにはタイムマシーンに乗れ

地方小都市で商売をすることには、何かと不利なイメージがあります。

商圏の人口が少ない、立地が悪いので集客しにくい、交通機関が発達していない、そもそも地名すら知らない人が多い。だから、なかなか商売がうまく行かずにすぐに廃業してしまう会社や個人が多いようですね。

そんな状況でも、岐阜県多治見市にあるマルイ不動産は、地方小都市に社屋を構えていながら、安定して成長しています。

マルイ不動産が成功している理由はいくつかありますが、その中で興味深い戦略が、タイムマシーン効果です。社長の小原隆浩さんは、タイムマシーンに乗って未来に行き、流行を先取りしているとのこと。

開業時の支出はできるだけ少なくする

マルイ不動産は、当初は不動産の売買や賃貸仲介だけをやっていましたが、ほどなくして任意売却にも携わることになりました。

小原さんの著書「コアラ社長の経営戦略」に任意売却のことが簡単に説明されているので、引用します。

不動産の”任意売却”というのは、現在競売中またはいずれそのままの状況であれば競売にかかってしまう不良債権化した不動産を、その不動産の所有者、債務者、連帯保証人、債権者等の同意を取り付け、裁判所を介さず任意に売却することをいいます。(3ページ)

任意売却の仕事を通して、小原さんは、事業に失敗する人の特徴をつかみます。

多くの場合、事務所や店舗の見栄えをよくしようと、開業間もない時に立派な机を購入したり、豪華な応接セットを用意したりと、見かけにばかり投資していたということです。そういったことに投資をしても、お客さんが喜ぶわけはありません。見栄えからは利益は生まれません。

だから、開業時の資金は、そういった見栄えに使うのではなく、事業にとって必要なところに回すべきなのです。


小原さんは、開業資金が乏しかったことから、数千円で購入できるものでも節約し、以前から使っていた家庭用電話機を使用したり、親戚からもらった使い古しの学習机を使ったり、中古のコピー機をもらったりして極力開業資金を使わないように意識していました。社長の机でさえ、リサイクル品を使っています。

お金を生まないものには、お金をかけるべきではないのです。

利益を生まないことにはお金を使わないという考え方を育てるには、普段からコスト意識を持つことが大切です。今では、どこの会社でもやっていることですが、失敗コピーの裏を有効利用することで、社内でのコスト意識が高まります。1円でも無駄にしないコスト意識を当たり前に持つことは、商売の基本と言えるでしょう。

長期計画よりも未来年表の方が実現しやすい

コスト意識を身に付けることは商売の基本ですが、それだけでは、なかなかうまく行きません。

商売を軌道に乗せるためには、今後、事業をどういった方向に発展させていくか計画しなければなりません。その場合、すぐに思いつくのが事業計画です。長期の事業計画を立てて、それを達成するにはどうしたらよいのかを考え行動し、うまく行けば、会社やお店が発展していきます。失敗したら、どこに問題があったのかを確認し、再チャレンジですね。


小原さんは、長期計画は開業時ではなく、開業から2~3年経過した段階で作成するのが良いと述べています。開業当初では、わからないことが多すぎるからです。

また、小原さんは長期計画のことを未来年表と言っています。長期計画だと実現しにくく思えますが、未来年表とすると、あたかも過去に起こったことを書き記しているような感じで、実現しやすく感じるからです。

でも、将来のことなんて誰にもわからないので、長期計画を未来年表と言い換えたところで、何も変わらないように思いますよね。

タイムマシーンを使えば未来を見に行ける

小原さんが、未来年表に過去形のように長期計画を描くことができたのには理由があります。

それはタイムマシーンに乗って未来を見に行ったからです。

そんな馬鹿なと思うでしょう。でも、これは事実です。しかも、地方小都市で商売をしている事業者なら、誰でも乗ることができます。その方法はいたって簡単です。

ただ、新幹線に乗って東京に出かけたらいいだけです。

東京で始まった新しい流れは、札幌、仙台、横浜、名古屋、大阪、福岡などの主要都市へ飛び、それが地方小都市へ波及していきます。
”はやり”だけでなく”すたれ”も、その現象なのです。地方小都市の中小企業にとって、その地域で将来確実に儲けられる方法を事前にキャッチして準備する・・・。”すたれ”に関しても聞き耳を立て、尻つぼみになる傾向に敏感になり、単なるブームにのっからない・・・。こんなに簡単なことはありません。
つまり、タイムマシーンに乗って、ちょっとだけ未来に行きノウハウを見てきてから現代に戻り、多少のアレンジを加え同じことをする・・・・・。地方小都市で商売をするからこそ、誰でもできる一番簡単な方法、これが「タイムマシーン効果」なのです。(40~41ページ)

日本では、流行の中心は東京ですから、そこに出かけることで、近い将来、地方小都市で流行することや廃れることを予測しやすくなるんですね。


とは言っても、東京で流行したことが、必ずしも地方小都市に波及するとは限りません。だから、「東京で今はこれが流行っているから地方でもこれをやればいいんだ」と早合点してはいけません。もしも、東京での一過性の流行で終わったら、地方小都市の中小事業者は大きな打撃を受けてしまいます。

そこで、東京で流行していることが地方小都市まで波及するかどうかを見極めることになります。

この見極めもそれほど難しいことではありません。東京に行った後に地方主要都市にも出かけるだけです。たとえば、中部地方で商売をしているのなら、東京に出かけた後、名古屋にも寄ってみればいいのです。そして、東京で流行していたことが、名古屋でも流行していれば、それは、中部地方全体にも波及する可能性が高いと判断できます。

このタイムマシーン効果こそが、小原さんの長期計画を過去のものであるかのような未来年表に仕上げたのです。

低予算で効果的な宣伝活動

商売を成功させるために欠かせないのは、広告宣伝活動です。

でも、地方小都市の中小事業者が、大企業のように多額の広告宣伝費を投入することはできません。そこで、重要となってくるのが、少ない予算で、より効果的に宣伝する方法です。

最も予算をかけずにできる宣伝は、口コミです。しかも、信用力が抜群です。最近では、インターネットでも、商品を実際に使用してレビューを書いているブログがありますよね。こういった消費者の使用体験というのは、とても信用力があります。でも、口コミによる宣伝は、時間がかかります。長期間、地道に仕事をしてきた結果でしかありませんので、これを主要な広告宣伝活動にするのは難しいですね。


マルイ不動産が考えた宣伝活動は、独自のキャラクターを作ることでした。小原(こはら)さんの苗字からコアラをキャラクターに選びました。コアラは人畜無害のイメージもあるので、親しみやすさもあります。

コアラのロゴをチラシや看板などに描くことで、「あのコアラのマークの会社」と覚えてもらいやすくなります。

さらにラッピングバスを走らせれば効果的です。コアラの絵が描かれたバスが、多治見市の道路を1日中走ってくれるので、宣伝効果は抜群です。しかも、地方小都市なら、バスがそれほどたくさん走っていませんので、1台だけラッピングバスを走らせても十分に効果があります。費用も折り込みチラシと同じくらいというのですから、予算も組みやすいですね。


また、信用力という面ではテレビCMも抜群です。

テレビCMなんて高額な宣伝費が必要と思ってしまいますが、ローカル放送局の特定の番組だけにCMを流せば、それほど費用は掛かりません。そのCMにラッピングバスを登場させれば、さらに効果的です。そして、CMの動画を自社ホームページでも見れるようにすれば、一石二鳥以上の宣伝効果を得られます。


こういった広告宣伝活動ができるのも、先ほど述べたタイムマシーン効果があってこそだと思います。

「東京や地方主要都市でうまく行っていることなら、地方小都市でも成功するに違いない」

そういう自信がなければ、なかなか広告宣伝費を使えないでしょう。マルイ不動産が、どんなに低予算で広告宣伝を行っているとは言っても、当たるか外れるかわからないことには、資金を投下することはできませんよね。


このようにタイムマシーンは、資金をどこに投資すべきかいう判断にも有効です。

東京から遠い場所に住んでいると、なかなか上京できないでしょうが、政令指定都市や県庁所在地なら比較的容易に出かけることができます。

そういった地方主要都市のうち何ヶ所かに出かけるだけでも、タイムマシーン効果を得られるのではないでしょうか?

コアラ社長の経営戦略 (QP books)

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