ウェブ1丁目図書館

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混雑したエレベーターで無意識に上を向いてしまう不思議な行動

混雑しているエレベーターに乗ると、無意識のうちに上を向いていませんか?

僕は、3階、4階、5階と移動階を表示しているあの部分を見上げていますね。ドアの横に移動階の表示がある場合は、視線を上げないこともあります。でも、奥の方に乗ってしまった時は、多くの場合、上を向いています。

マジシャンの前田知洋さんによると、この行動は、混雑時にプライベートエリアが圧迫されることが原因のようです。顔を上げることで、一時的にプライベートエリアを確保できているような錯覚を生み出すことができるとのこと。

人には侵入されると不快に感じる距離感がある

前田さんは、プライベートエリアを「他人に侵入されると不快に思う空間」と、著書の「知的な距離感」の中で説明しています。

他人が、あまりに近くに寄ってきたとき、不快に感じることがありますよね。これは、自分のプライベートエリアに侵入されたことが理由です。プライベートエリアは、正面だと広くなり、側面はやや狭め、背中側になるとかなり狭くなります。正面1メートルくらいまで知らない人が近づいてくると不快に感じますが、背中だと1メートルくらいの距離なら、それほど不快に感じませんよね。

プライベートエリアの広さは、人によって異なりますし、状況によっても広くなったり狭くなったりします。

例えば、昼間の乗客がほとんどいない電車の中で、自分の隣に見ず知らずの人が座ってくると不快になります。座席がたくさん空いているのだから、もっと遠くに座ればいいのにと思いますよね。反対にラッシュ時のように電車の中が混雑していると、背中が他の乗客に触れるぐらいの距離しかなかったとしても、それほど不快に感じることはありません。

これは、ガラガラの電車の中だとプライベートエリアを広くとりますが、満員電車の中だとプライベートエリアを狭くするからです。人は、社会生活の中で経験を積み、プライベートエリアを広くしたり狭くしたりしているんですね。よく幼い子が電車に乗ると、泣きだしたり大声で叫ぶようにしゃべりだしたりします。もしかすると、プライベートエリアを広げたり狭めたりする経験を積んでいないため、余計なストレスがかかってしまってるのが、その理由かもしれません。

色でプライベートエリアの広さをアピール

前田さんは、着ている服の色によってもプライベートエリアの広さが変わると述べています。これは、服を着ている本人がプライベートエリアを広く感じるかどうかということではなく、他人に与える印象が、着る服の色によって違ってくるということです。

全身をダークカラーにするとプライベートエリアを他人に広く感じさせます。淡い色だと、逆にプライベートエリアを狭く感じさせます。

黒やダークな色は、見るものにプライベートエリアを広く感じさせ、相手に近寄りがたい印象を与えます。逆に、程よいバランスの、白など淡い色はプライベートエリアを狭く感じさせ、相手に親近感を与えます。胸元に白いシャツ、それ以外の上半身をダークカラーのジャケットに包む組み合わせが不動の地位を築いているのは、人間が本来持つプライベートエリアと無関係ではありません。(57~58ページ)

男性のスーツ姿というのは、まさにこれですよね。真っ白なスーツを着て出社すると、今から仕事をする気がないのではないかと思われそうです。また、シャツまで黒色にすると、近寄りがたい雰囲気を出してしまうので、接客業の場合はお客さんが話しかけにくくなります。

リクルートスーツが紺色なのも、プライベートエリアを適度な距離に保てることが理由なのかもしれません。

信頼関係を生み出すために

前田さんは、観客のすぐそばでマジックを見せるクロースアップマジックをしています。

テレビで披露されていることもあるので、前田さんのクロースアップマジックを見たことがある人も多いのではないでしょうか?もしも、レストランで家族と食事をしている時に前田さんがテーブルに近づいてきて、「マジックを見ませんか?」と言われれば、テレビに出ている有名なマジシャンだから、見せてもらおうと思うでしょう。

でも、クロースアップマジックがまだ有名でなかった頃は、前田さんがレストランで、「マジックを見ませんか?」と尋ねても、ほとんど断られていたそうです。これは、食事中の人のプライベートエリアに入っていったからですね。そして、親密な人同志での食事中は、それが、より強固なものになることも断られた理由です。

親しい人どうしでテーブルを囲むことで生まれたプライベートエリアに他人が割り込むことは至難の業です。注文をとるサービスさえも邪魔に感じることがあるかもしれません。一人の時のプライベートエリアは自分の身を守るための空間ですが、二人以上では相手のことを守る気持ちが働き、親密な者どうしのプライベートエリアは、より強固なものになります。(30ページ)

強固なプライベートエリアに入ってマジックを見せるにはどうすればいいのか?

前田さんは、マジックよりも先に見せるものがあると言います。それは、レストランのマネージャーやスタッフと親密に会話をしている姿です。話している内容を聞かせる必要はありません。食事をしているお客さんの視界に会話をしている姿が入ればいいのです。レストランのマネージャーと親密に会話をしている姿を見ると、お客さんは安心します。それは、強固だったプライベートエリアを和らげることにつながります。

自分から、「怪しい者ではありません」とか「レストランから大変信頼されています」と言っても、なかなか信用してもらえませんが、打ち解けた感じで会話をしている姿を見れば安心できますよね。

日頃から距離感を意識することで自然と相手を気遣えるようになる

他にもテクニック的なことが、同書ではいくつか紹介されています。

  1. 外開きの扉を開けて人を通す時は、家族など親密な人の場合はプライベートエリアを通すために通路側に体の正面を向けます。若い異性を通す時は、トラブルを避けるために体の正面がドア側を向くようにして通路に背中を向ければ、相手はプライベート空間の外側を通ることになります。
  2. 上司にお叱りを受ける時は、一旦椅子から立って上司に座ってもらい、お互いのプライベートエリアを侵さない距離感を保てば、余計なストレスを与えずに済みます。
  3. 大切な人にプレゼントをする時、自分のプライベートエリアでプレゼントを見せた後、相手のプライベートエリアで渡すと、思いが伝わりやすくなります。具体的には、自分の胸の前あたりでプレゼントを開けて見せ、両手で相手のプライベートエリアに持っていき受け取ってもらいます。

僕は、こういったテクニックを知ると、何となく嫌な感じがしてしまいます。でも、最初はテクニックとしてやっていたとしても、やがて自然に振る舞えるようになれば、それは、相手に不快感を与えなくなりますし、好感を持たれることでしょう。

相手との距離感を気にかけ、正しい距離で対峙すると、マジック以外でも嬉しい副作用があります。動きがエレガントに見え、相手への気遣いが伝わるようになります。そして、何よりも大切なのはエレガントなフリをしたり、相手を気遣うフリをする必要がなくなり、自然にそう振る舞えるようになります。(2ページ)

混雑したエレベーターで無意識に上を向いてしまうのと同じように、人との距離感を自然に気に掛けることができるようになれば、相手に余計な不快感を与えなくなれそうですね。

知的な距離感

知的な距離感