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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

現地での地道な活動と最先端の研究開発で好業績の味の素

経営者

僕は、テレビ東京系列で放送されているカンブリア宮殿という番組が好きで毎週見ています。作家の村上龍さんと経営者の方が対談する番組で、ゲスト出演されている社長の会社がなぜ好業績なのかといった話を紹介しています。

紹介された企業は、そのほとんどが海外進出しています。業績が良い企業は、海外に目を向けるようになりますし、海外からも声がかかるから、必然的にそうなるのでしょう。海外進出の形は、それぞれの企業で異なりますが、味の素は、現地での地道な活動と最先端の研究開発という異なる2つの点で興味深い企業です。

なお、味の素のトークの内容は、「カンブリア宮殿 村上龍×経済人 変化はチャンス」に収録されています。

現地の人の生活に密着する味の素

味の素は、1909年に創業した100年企業です。

味の素の創業前は、味覚というのは、「甘い」「塩辛い」「苦い」「酸っぱい」の4種類だけでした。でも、この4種類では、説明できない美味しい味があることに東京帝国大学教授の池田菊苗さんが気付きます。

「湯豆腐はなぜうまいのか?」

甘くも塩辛くもないのに美味しいし、苦みも酸味もないから嫌な味もしない。その理由は何なのかを池田さんは研究を重ね、それがアミノ酸の一種であるグルタミン酸だということがわかりました。池田さんは、この美味しい味を「うま味」と名付けます。そして、池田さんが発見したうま味を商品化したのが、味の素の創業者の鈴木三郎助さんだったのです。

今や味の素は、日本人の料理によく使われる調味料となっています。飲食店でも使われているので、味の素を食したことがないという人は、日本にはほとんどいないでしょう。

一般大衆化した味の素は、日本国内では、工場のラインで大量生産し、まとめて商社やスーパーなどの小売店に販売していると思います。でも、海外では、事情が違うようです。

人の味覚は十人十色。だから、誰にでも受け入れられる味というのは、おそらくないでしょう。国や民族が異なると、なお一層、味覚に違いが現れます。それなのに味の素が海外、特にASEAN諸国で好業績なのは、現地での地道な活動があるからです。

インドなどに赴任している味の素の従業員の移動手段はバスと列車だそうです。まだまだ公共交通機関が発達していない国では、10時間くらい遅れて列車が到着することもあります。だからといって、ハイヤーを使うことは許されません。社長の伊藤雅俊さんは、現地の人の暮らしに密着して、現地の人の好きな味を調べることが大切だと述べています。

三つの「現」というのがありまして、まず現地語を話す。現地の食を知る。そして、現地の人のことを理解する。この三つが大事なので、それはどこの国でも外さないでいこう、ということです。(380ページ)

日本で販売している「ほんだし」は、カツオが主原料となっています。しかし、ベトナムの場合は豚とのこと。そもそも好みの味が日本人とベトナム人で違うから、このように主原料を変えているそうです。だから、日本で売られている商品をそのままベトナムで販売しても現地の人たちに受け入れられません。三つの「現」を意識して地道に活動しなければ、こういった日本人とベトナム人の味覚の違いを知ることはできなかったでしょう。

味の素は庶民が小銭で買う商品

味の素という商品は、決して高級な食品ではありません。

日本だと、スーパーに行けば安価に手に入れることができますし、安くで買えるという点は海外でも同じです。だから、海外で味の素をたくさん売ろうと思うのであれば、お金持ちを対象とした販売戦略ではダメで、庶民の暮らしを理解したうえで、その国の庶民の買い物の仕方にあった売り方をしなければなりません。

ベトナムの場合だと、庶民の買い物は、日本の駄菓子屋のようなところです。味の素をベトナムの人たちに食べてもらうためには、小さなお店に1軒1軒足を運んで、少ない単位で売り歩いていくしかありません。日本のように大手スーパーが全国展開しているのなら、一度、契約をしてしまえば、後は配送だけすれば良いのでしょうが、ベトナムではそういうわけにはいきません。

庶民が小銭を持って小さなお店に味の素を買いに来るのですから、それに合わせた売り方をする必要があるんですね。そのためには、どうしても、たくさんのお店に少量ずつ売り歩かなければならないのです。こういった地道な活動で、味の素はASEAN諸国での売上を伸ばしているそうです。

1グラムあたり4,000円もする味の素

庶民が手軽に手に入れることができる味の素ですが、実は、とても費用がかかる調味料なのです。

昆布からグルタミン酸を抽出して、味の素を作るとなると、1グラムあたり4,000円もするそうです。100グラム作れば40万円もするのですから、到底、庶民が手に入れることなんてできません。仮に低価格で昆布からグルタミン酸を抽出できたとしても、味の素の消費量から計算すると、日本の昆布が3日か4日でなくなってしまうとか。

それでは商売にならないので、小麦や大豆から抽出しましたし、その次には発酵法という製造方法で、植物を使ってグルタミン酸をつくるようにしました。(中略)
今、やっていることの一つに、アミノ酸を発酵させてグルタミン酸を取り出し、残ったアミノ酸を発酵させた液をまた畑に戻すというものがあります。このアミノ酸を発酵させた液は栄養の宝庫なので、またコーンとかサトウキビができる。そういうサイクルをつくっています。(383~384ページ)

このような研究開発を続けているから、味の素は、低価格でいつでも手に入れることができるんですね。

これからは、世界中で、食糧危機が深刻になって来るでしょうが、少ない資源で多くの食料を作り出す研究開発を行っている味の素なら、食糧問題の解決に貢献できるのではないでしょうか?特にアミノ酸は、人間が生きていくためには必ず必要な栄養素です。ただ、美味しい調味料というだけではないんですね。

アミノ酸というのは、実は食べるものだけではなくて、歯、髪の毛、皮膚、血液と細胞すべてに影響します。これに対してもまだわからないことがいっぱいある。
そういうものを解き明かして、世の中の役に立っていく、命を考えていく。そういうことをやっていくといいと思います。そしてそれがもちろん日本人、アジア人だけではなくてグローバルに人の役に立つ。その中で強いもの、世界で一番のものを持っているというのがグローバル企業である、というふうになっていくといいと思いますね。(385~386ページ)

一方で味の素を地道に売り歩く、他方で最先端の研究開発を行う。

多くの人は、後者が味の素がグローバル企業として成功している最大の要因だと思うでしょう。しかし、伊藤さんは、地道な活動と最先端の研究開発の両方が味の素らしいのだと述べています。

主役と脇役の両方がそろっているから、味の素は100年継続しているのであり、海外でも好業績なんでしょうね。

カンブリア宮殿 村上龍×経済人 変化はチャンス

カンブリア宮殿 村上龍×経済人 変化はチャンス

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