ウェブ1丁目図書館

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年商83億円なのに経常利益5万円。それでも倒産しないメガネ屋さんの経営術。

テレビ東京系列で放送されているカンブリア宮殿は、作家の村上龍さんと経営者の方が対談するトーク番組です。毎週、知っている会社から無名の会社まで、様々なタイプの社長さんが出演されて、興味深い話を聞かせてくれます。

そのカンブリア宮殿に出演された経営者の方で、特に印象が強かったのがメガネ21の平本清さんです。メガネ21は広島を中心とするメガネチェーン店です。年商は83億円なのに経常利益はたったの5万円。5億円の間違いじゃないのかと思ったのですが、正真正銘50,000円です。普通なら、倒産寸前の会社としか思えないのですが、メガネ21はそうではありません。

従業員のボーナスが400万円とか500万円なのですから、むしろ、業績はかなり良いはずです。

利益は全てお客さんと従業員に還元

カンブリア宮殿は書籍にもなっており、平本さんが出演された時の内容は、4巻に収録されています。

企業は利益を獲得することを目的とした組織です。だから、利益を獲得できない企業というのは、そのうち消えてなくなってしまうのが普通です。しかし、メガネ21には利益がほとんど残っていないにもかかわらず倒産しません。

なぜ、利益がないのに倒産しないのか?

その答えは、利益をお客さんと従業員にすべて還元しているからです。

メガネ21が製造販売しているメガネの原価率は70%です。つまり、利益率が30%しかないということです。そう、メガネ21は、製品にのせる利益が極めて少ないのです。さらにそのわずかな利益も従業員に高額のボーナスを支給するので、最終的に会社にはほとんど利益が残らないのです。

利益をすべてお客さんと従業員に還元していたら、万が一、業績が悪化した時にどうするんだろうという疑問が湧いてきますよね。

その点については、普段から従業員に高額のボーナスを支給しているのですから、会社に利益を残さなくても、従業員が路頭に迷うことはありません。会社が万が一に備えてお金を社内に貯め込むのではなく、従業員が自分で万が一に備えるということなんですね。

新規出店に必要な資金は従業員の出資で賄う

そうは言っても、会社にお金がなければ、新規出店のための投資ができないから、店舗数が増えないように思えます。

これに関しては、メガネ21では、従業員から出資を募って、新店舗の開店をします。ある従業員がお店を持ちたいと思えば、社内で出資してくれる従業員を募集します。この人にお店を任せても大丈夫だと思えば、出資金は集まりますが、まだまだお店を任せれるだけの経験が足りないという評価が多いと、出資は集まらず出店はできません。

だから、出店のための資金を会社が貯めておく必要はないんですね。

資金には利息が付きます。今は利率を3%としていますが、以前は10%もあったそうです。これだけ高い利息をもらえるのなら、誰だって出資をしたいと思うでしょう。社内預金制度を採用している会社はありますが、利率10%という会社はあまりないでしょうね。

さすがにこんなに利率が高いと税務署からも指摘を受けたようです。

税務署からも言われましたよ。市場金利に比べて異常に高いというから、「最低一二%から二九%までとか、コマーシャルでやっているでしょう」と言ったんです。「いや、あれはサラ金で回収不能になる可能性があるからなんですよ」と言うので、「うちもそうです。無担保だし、会社はいつ潰れるかわからないと社員に説明して集めました」と。(444ページ)

税務署からの指摘にこんな返しをする人って、そうそういないのではないでしょうか。

また、メガネ21は極めて利益が少ないので、納める法人税もとても少ないという特徴があります。これは、税務署からすると怪しいということになります。そのため、ある時、税務署から査察が入りました。通常の税務調査の場合、税務署から税理士に連絡が行き、そして、会社に税務調査がある旨が伝えられます。そのような連絡がなく、突然、税務署がやってくるのが査察です。完全に脱税していると疑われていたわけですね。

でもメガネ21は決して脱税をしていません。しかし、税務署にしてみれば、メガネ21から法人税が入ってこないのですから、これからも利益を上げないつもりですかと指摘してきます。

「税金というのは個人納税が原則でしょう。私たちも税務官と同じように個人納税しています。ただ一つ違うところは、あなたたちより僕の方が三倍ぐらい払っているから、今度街で会った時はちょっとよけてね」と言って大笑いしたことがあります。(443ページ)

営業ノルマは一切なし

400万円も500万円もボーナスがもらえる会社なら、きっと営業ノルマも厳しいのだろうと思うでしょうが、メガネ21にはノルマは一切ありません。また、仕入れの権限もすべて店長に与えていますし、人の採用も最終面接はお店の人が行い決定します。これから一緒に働く仲間を決めるのですから、お店の人に採用の権限を与えるのは合理的ですね。

でも、どうして営業ノルマを従業員に課さないのでしょうか?ノルマがあった方が売上が増えそうな気がするのですが。

ノルマがあれば業績が上がるのだったら、僕は二兆円とか言いますよ。社員にも目標がないとやる気にならないという人がいました。「じゃあ二千億円」と言ったら、それは無理だと言っていました。「それじゃあ二十万円」と言ったら、二日で達成してしまうから面白くない、と。だったら「あなたがやる気になって達成感があるノルマを決めて、自宅の床柱かなんかに貼っときなさい」と。疲れるから人には言うなというんです。(447ページ)

メガネ21の場合、利益は従業員に還元されます。だから、そもそもノルマを決めなくても、働いて売上を上げれば、自分のボーナスも増えるので、ノルマを設定しても意味ないということですね。

また、ボーナスを決めるための人事評価については、誰もが自由に見ることができる仕組みになっています。プライバシーが侵害されているように思えますが、密室で一部の人たちだけで人事評価する方が、よっぽど不健全だと言えます。

ある人の評価が高いことを知って、不満であれば文句を言えます。でも、その文句も他の人に見られているので、別の人がそんなことはないと反論する場合もあります。このように従業員全員が人事評価を見れて意見を言える仕組みの方が、適切な人事評価ができるのかもしれませんね。

平本さんの話を聞いていると、平等を重んじているように思えます。平等というと誰もが同じ待遇を受けるものと考えてしまいますが、平本さんの言う平等とは努力に応じた平等です。

村上 平本さんは、共産主義者じゃないですよね。
平本 僕はバリバリの自由主義、資本主義の競争大好きです。勝ったら楽しいですから。(450ページ)

カンブリア宮殿 村上龍×経済人 4 (日経スペシャル)

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