ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

不老不死のカギを握るのはガン細胞か!?

不老不死。

この言葉に憧れている人は多いのではないでしょうか?生き物は、死があるから尊いのだと考えている人もいるので、全ての人が不老不死を望んでいるわけではないと思いますが、それでも、長生きを望む方は多いでしょう。

しかし、人間には寿命があるので絶対に死なないということはありません。また、どんなに長生きしても、その限界は120歳程度だと考えられているので、それ以上の長生きは困難なことです。

現代の日本人は、2人に1人がガンにかかると言われています。なので、事故などの不測の事態が起こらなければ、50%の確率でガンになり、そして、多くの場合、それが原因で寿命が尽きます。

だから、ガンにだけは、かかりたくないと思っている方が多いでしょう。でも、不老不死のカギを握っているのも、実はガン細胞かもしれないんですよね。

ガン細胞はわがまま

ガン細胞については、一般人にはどういうものなのか理解しにくいですが、木下圭さんと浅島誠さんの共著「新しい発生生物学」で、比較的わかりやすく解説されています。

ガンがなぜ生物の命を奪ってしまうのか?

それは、ガン細胞が際限なく増加し続け、全身の器官の正常な働きを妨げていくからです。例えるなら、満員電車の中にホームで待っていた人たちが乗り込もうとして、車両の端に追いやられた人が押しつぶされてしまう状況と言えるでしょうか。

そういう他人への思いやりがない人のような細胞が、ガン細胞ということです。


また、ガン細胞は思いやりがないので、譲り合う精神も持っていません。

正常な細胞は、培養皿の中で育てると動きまわり、二個の細胞が接触するとどちらも方向を変えて離れていきます。ところがガン細胞を培養すると、細胞同士がぶつかっても運動はとまらず、したがってお互いにのこのこ乗り越えていきます。これは、ガン細胞が正常細胞がもっている「運動の接触阻止」の性質を失っていることを表しています。(201~202ページ)

まるで、前から人が歩いてくるのに道の真ん中を歩き続ける人みたいですね。こういう場合、とりあえず道の端によって接触を避けようとする場合が多いのですが、一部の人はそのような配慮がありません。ガン細胞は、まさにこの場合の一部の人なのです。

どんなに渋滞していても止まらない車

お盆や年末年始、ゴールデンウィークは、高速道路が渋滞します。この渋滞に巻き込まれると、目的地に到着するのに予定より1時間も2時間も余計にかかってしまいますよね。

でも、多くの人は、それにじっと我慢して、ゆっくり少しずつ前に車を進めていきます。

ところが、ガン細胞には、じっと我慢するという考え方がないんですね。それは運動の接触阻止の性質を失っているからです。

ガン細胞は、他の細胞とぶつかってもお構いなし。次から次に増殖しては動き回り、他の細胞と接触します。だから、ガン細胞が増殖し始めると、体の中では玉突き事故が際限なく起こるんですね。


正常細胞をシャーレで培養した場合、どんなに増殖したとしても、シャーレの一面が正常細胞でびっしりと埋め尽くされた段階で、増えようとするのをやめます。つまり、シャーレの底面一層しか、正常細胞は増えないのです。

しかし、ガン細胞は、正常細胞にある分裂の接触阻止という機能が失われているので、シャーレの底面にびっしりと増殖した後も、それを乗り越えて上に積み重なるように増え続けようとします。

まるで、玉突き事故の現場に猛スピードで突っ込んでくる車のようですね。事故車とぶつかった車は、宙に浮いて、事故車の上に乗っかります。さらに次から次と猛スピードで別の車が突っ込んでき、事故車とぶつかり乗り上げていきます。

これが、ガン細胞の特徴です。体の中で玉突き事故が起こり続ければ、その個体がやがて死に至るのは容易に想像できるでしょう。

ガン細胞には寿命がない

ガン細胞が増殖し続けるのは、寿命が尽きないということとも関係があります。

正常細胞のDNAは、2本の紐がらせん状に絡み合っているような形をしています。その紐の端の部分をテロメアといいます。正常細胞は何度も分裂しますが、それは無限ではありません。分裂するたびにテロメアが少しずつ短くなっていくからです。すなわち、テロメアが短くなることが細胞の老化であり、分裂の停止が死なわけです。

しかし、ガン細胞はテロメアが短くなりません。その理由は、テロメアの長さを維持するテロメラーゼという酵素をたくさん持っているからです。

テロメラーゼはテロメアの長さを維持する酵素であり、正常細胞ではこの酵素の遺伝子が不活性化しているため老化が進行するのですが、ガン細胞では突然変異にともなってこの遺伝子が活性化されるために無限の寿命を獲得すると考えられています。(221ページ)

どうやら、テロメラーゼが不老不死のカギを握っているようですね。そして、ガン治療のカギを握っているのもテロメラーゼなのかもしれません。


正常細胞でテロメラーゼを活性化させ、ガン細胞でテロメラーゼを不活性化させる。


これが実現した時、人類は不老不死を手に入れることができるのかもしれません。

でも、その時、人類が不老不死を望むかどうかは、今はわかりません。

新しい発生生物学―生命の神秘が集約された「発生」の驚異 (ブルーバックス)

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