読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

セブンイレブンが特定の地域に集中的に出店し工場を分散配置する理由

日本のコンビニを代表するセブンイレブンは、全国にたくさんの店舗を持っています。

でも、47都道府県すべてに店舗があるわけではありません。これは有名な話ではあるものの、意外と知られていなかったりします。セブンイレブンが、全都道府県に出店していない理由は、同社が採用しているドミナント戦略と深く関係しています。

長年セブンイレブンを取材してきた緒方知行さんの著書「セブン-イレブンのビジネス・イノベーション」によると、ドミナント戦略とは、一言で言えば、特定の地域に集中的に出店することです。

なぜ1日に弁当や総菜を3回生産し3回配送するのか?

セブンイレブンでは、商品を1日に3回、店舗に配送します。弁当や総菜に関しては、配送に合わせて3回生産されます。

1日に1回生産、1回配送に比べると、物流コストが3倍多くかかることになるので、3回配送は利益を圧迫する原因になると思いますよね。普通に考えれば、午前中に当日の需要を予測して、必要量をまとめて生産し配送した方が、コスト削減につながるはずです。それなのに、セブンイレブンが1日3回配送にこだわるのは以下の理由があるからです。

一日一回大量に作った商品を、例えば朝早く店へ納品したとする。翌朝まで新しい商品の納品はないから、朝や昼はともかく夜に買いに来たお客は、下手をすれば相当に古いものを食べさせられることになる。鮮度劣化の心配のある具材は、たとえおしくてもそれでは使えないし、防腐剤もたっぷり使わないと危険である。味も濃いものにしなければならない。(33~34ページ)

1日1回まとめて、弁当や総菜を作るよりも、朝昼版とその都度作った方が、店頭には鮮度の良いものが並ぶのは、容易に想像できます。当然、新しいものの方が美味しいわけですから、お客さんは、そちらを望むでしょう。


また、1日に3回配送することで、商品の売れ行き予測の精度が高まります。

1日に1回しか発注をしない場合よりも3回に小分けして発注する方が、きめ細かい需要予測が可能となります。天気予報が外れて昼から雨が降り出した場合には、来客数が減ることが予想されるので、夜の発注数量を減らして無駄を省くことができます。

反対に午前中に予想以上に多くのお客さんが入り、ある商品が品切れを起こしたとしても、昼の発注で、それを補充することが可能となります。

このように3回配送は、欠品による機会損失と過剰在庫の発生による廃棄ロスを減らすことができるので、1回配送と比較すると、お客さんの需要に応えた陳列が可能となります。

なぜ工場の分散配置をするのか?

セブンイレブンは、全国に200ヶ所以上も工場を分散配置しています。

そんなに工場を配置する必要はないと思うでしょうが、ドミナント戦略にとって工場の分散配置は欠かすことができません。

確かに工場の数を減らして、1ヶ所で集中的に生産をして、各店舗に配送した方が固定費を削減できます。しかし、工場の数を減らすと、工場から近い店舗と遠い店舗ができてしまい、遠い店舗には、弁当や総菜が作られてから、かなりの時間が経過して届けられるので鮮度が落ちてしまいます。

鮮度が落ちた食品を提供して、お客さんが不満に感じたら、次から弁当や総菜を買ってくれないかもしれません。そういったデメリットを考えると、工場を分散配置して、各店舗にできるだけ早く配送できるようにした方が、コストはかかっても、お客さんの満足度が上がるので、売上を増やすことができ、結果的に大きなメリットがあります。

もともと生産と販売は、仕入れと販売のように一体のものであった。パンを買いにいく場所は、パンをつくっているところであった。
産業の近代化は、生産と販売の分離(流通の世界では仕入れと販売の分離)を促進させた。つまり生産や仕入れの集中化(販売は分散)による規模の経済性の実現が、それによって、ローコスト化も含め可能となった。
本来一体であったものの分離は、一方で大きな経済効率を実現させたが、半面*1いくつかのマイナス面も生み出した。(中略)
かつて問題にならなかった生産と販売、仕入れと販売の分離が生んだデメリットが大きく表面化し始めた。
それが、生産と販売(仕入れと販売)の間にある、①距離的・時間的乖離、②感覚的・感情的乖離である。(18~19ページ)

工場の分散配置は、昔ながらの手作りの味を追求したものと考えることもできますね。

なぜ消費期限30分前に商品を排除するのか?

セブンイレブンでは、消費期限30分前になった商品がレジを通過すると、販売期限切れと判断して、お客さんの手に渡らないようにしています。

消費期限内だから問題ないと思うでしょうが、お客さんがその食品を購入して食べるのはいつでしょうか?おそらく、帰宅した時には、消費期限が切れているはずです。そうすると、お客さんが口にする食品は消費期限切れのものとなってしまいます。

そうならないために、セブンイレブンでは消費期限30分前に商品を排除しているのです。

当然、日付のチェックは工場の段階、デリバリーの段階、そして売り場に並べられる段階と、各段階でシビアになされる。店は、各加盟店のオーナー(店主)、従業員が常に商品に目を配り、チェックを行っているが、OFCも店回りのつど厳しく注意すべきチェック項目のひとつになっている。
ここまでチェック機能が働いているから、消費期限切れの商品がお客の手に渡ることはあり得ないはずだが、それでも念には念を入れ、フェイルセーフの考えで、最終段階のチェックがある。それがレジ通過時点である。「販売期限切れ」の商品をレジではねてしまうのだ。(126ページ)

なぜ生鮮食品をこれまでやってこなかったのか?

セブンイレブンがお客さんに対して実施するアンケートの回答には、必ず肉、魚、野菜のいわゆる「生鮮三品」も取り扱って欲しいというものがあるそうです。

お客さんの要望に応えることが、小売りの売上増と利益の拡大につながるはずだから、生鮮三品をセブンイレブンで扱うことは顧客満足度の向上の観点からは好ましいことと言えます。しかし、セブンイレブンでは、生鮮三品の取り扱いを以下の理由から行っていません。

生鮮三品をセブン-イレブンの店がやったら、肉も魚も野菜もすべて中途半端になって、お客さまに満足していただけないことになってしまう。肉も魚も野菜もあるけれども、ほんのちょこちょこの品揃えで、お客さまにとっては買いたいものがないということになる。これではお客さまは絶対に満足してくれない。(140~141ページ)

要するに勝てないケンカはしないということです。

コンビニはスーパーと比較すると、売り場面積が狭いので、生鮮三品の品揃えで勝つことはできません。また、それらを専門に扱っている精肉店、魚屋、八百屋にも品揃えで勝つことはできません。


ここまで読んでいただければわかると思いますが、セブンイレブンドミナント戦略にこだわるのは、鮮度、品揃えを良くして、お客さんの満足度を高めるためなんですね。

特定の地域に密集して店舗展開し、工場を分散配置すれば、各店舗に短時間で商品を届けることが可能となります。しかも、1日3回配送にするのですから、鮮度も保たれ、例え欠品したとしてもすぐに補充することができます。

もしも、お客さんの求めている商品が店舗に陳列していなかったとしても、近くの別のセブンイレブンの店舗に行って、そこで目当ての商品があれば、欠品の不満もすぐに解消されます。そうすれば、お客さんは、セブンイレブンに行けば、欲しいものが手に入るといった印象を持つようになります。


特定地域に集中的に出店するドミナント戦略は、お客さんにとっても、お店にとってもたくさんのメリットがあるんですね。

セブン-イレブンのビジネスイノベーション

セブン-イレブンのビジネスイノベーション

*1:原文ママ。「反面」と思われる。

広告を非表示にする