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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

株式の長期投資は社会的意義のある企業を育てる

株式投資は、ただ持っているだけで値上がりした株式を売り楽して儲けること、日々の値動きにかじりついて頻繁に売買を繰り返して利ザヤを稼ぐ行為。

きっと、多くの日本人がこのようなイメージを持っていることでしょう。そして、株式投資で儲けることに社会的意義はないと感じているのではないでしょうか?確かに何もせずに株価が上がったから儲かったという場合、株主は何の価値も生み出していないように思います。チャートの動きだけを見て、1日に何回も売買を繰り返しているデイトレーダーと呼ばれるような人たちも、その存在に社会的意義があるのかと疑問に思うことがあります。

だから、株式投資全般に対して、多くの日本人はあまり良い印象を持っていないことでしょう。でも、長期投資家と呼ばれる人たちは、短期的に売買を繰り返す投資家とは一線を画しています。

同時多発テロでニューヨーク株式市場を救った長期投資家

2001年9月11日にアメリカで同時多発テロが起こりました。

この時、売りが殺到し株価は1週間で14%近くも暴落し、1929年の世界大恐慌以来の下げ幅となりました。このままだとニューヨーク株式市場は大混乱となるところでしたが、そうはなりませんでした。

なぜ、ニューヨーク株式市場は混乱しなかったのでしょうか?それについて、さわかみ投信代表取締役である澤上篤人さんは、著書の「10年先を読む長期投資」で、長期投資家たちが株価を買い支えたと指摘しています。

同時多発テロはほんとうに痛ましい事件でしたが、長期投資家にとって株式相場が暴落したときは絶好の買い場であることに変わりはありません。ニューヨーク株式市場で「超」がいくつも付くような優良企業の株が売り浴びせられていた、それを日ごろから「いつかは手にしたい」と思っていた長期投資家たちが買いにきた、ということでしょう。
こう書くと、長期投資家はどこか狡猾で非情なイメージに思えるかもしれません。でも、ここで私がいちばんいいたいのは、「もしテロ発生後に長期投資家が買いに入らなかったら、ニューヨーク株式市場はどうなっていただろうか」ということなのです。
(83~84ページ)

同時多発テロの後、短期の株価リバウンドを狙って買いに走った投資家もいたはずですが、それ以上に長期投資家が買いに動いて株価を支え、アメリカ経済を危機から救ったのです。

バブル崩壊で日本企業を見捨てた国内の投資家

日本では、アメリカほど長期投資家と呼ばれている人はいません。

その証拠にバブル崩壊後に日本の株価は急落し、失われた10年と呼ばれる不景気に突入、さらにデフレも深刻化していきました。もしも、バブル崩壊後に株価を下支えしようという長期投資家が日本にたくさんいれば、ここまで長期の不況にならなかったかもしれません。

日本の投資家は、自分が損することを恐れ逃げるように株式を売りに走ります。反対にアメリカの長期投資家は、株価が暴落しているときに社会的に存在意義のある企業、将来的に豊かな社会を築いてくれると期待できる企業の株式を買いに走ります。

もしも、同時多発テロが起きた時、アメリカの投資家が日本の投資家のような考え方を持っていたら、アメリカ経済は、あれほど短期間に持ち直すことはなかったでしょう。

長期投資家がその国の社会を豊かにしていく

日本で長期投資家が育ちにくいのは、多くの日本人が金融資産を預貯金で保有しているからです。

預貯金は一見堅実なように思います。しかし、預貯金は、自分の財産の使い道を銀行や郵便局に一任してしまう行為だということを忘れてはいけません。

例えば、自分は農業に多くの資金を投資して欲しいと考えていても、銀行や郵便局が別の業種に投資する方が儲かると判断すれば、農業へ投資されることはありません。これでは、いつまで経っても、国民が理想とする社会は築けないでしょう。

投資というものは自分のお金を自分の意思と判断で、自分の夢や価値観に沿った方向に投入していくことです。預貯金の丸投げ無責任とはちがい、「なんのために」「どんなところへ」自分のお金を使うのかがつねに問われます。ここが大事なところです。
いままでは、国や金融機関がつくった仕組みのなかで、私たちのお金が動かされていただけです。
(185ページ)

澤上さんは、これからは長期投資家が「民間版の景気対策」という役割を担わなければならないと述べています。

銀行や郵便局に漫然とお金を預け、そして、金融機関が不祥事を起こすとバッシングを浴びせるのはいかがなものでしょうか?そうやって文句を言うのなら、自分が社会的に意義があると認めた企業の株式を買って応援するべきでしょう。

株式は損するリスクが高いと言われますが、預貯金も金融機関の業績が悪くなれば、公的資金で支援されるわけですから、国民の財産の一部を損失の補てんに充てるという点ではリスクがあると言えます。

それなら、個人が自分の理想とする社会を築いてくれそうな企業に直接投資をして損した方がましですし、そもそも、そういった企業は多くの投資家の支持を集めるでしょうから、そう簡単に倒産することはないはずです。

日本人の給料が増えることに期待しない

「10年先を読む長期投資」では、これから日本はじわじわとインフレになっていくけど、給料が増えていくことは期待できないと書かれています。この書籍は、2008年に出版されたものです。澤上さんの予測は見事に的中しており、2012年以降ジワジワと物価が上昇していますが、賃金や給料は物価上昇ほどに増えていません。

世界の人口は70億人となり、豊かな生活をできる人が増えています。また、今後も途上国の人々が豊かになっていきます。そうなると、世界中の人々が、これも買いたいあれも欲しいと言いだし、やがてエネルギー、工業原材料、食糧が不足し始めるでしょう。

こういった資源が希少となれば、企業は多くの経済価値と交換にそれらを買うはずです。

一方、世界の人口は増加の一途。これは、労働力が増え続けていることを意味し、やがては労働力が過剰となるでしょう。そうなれば、労働者に多くの賃金や給料を払うことはなくなり、国際化している企業なら、物価の安い国の労働力を利用するはずです。

すなわち、人口の増加でモノが減り労働力が増えると、モノの価値が上がり労働力の価値が下がることになります。商品の販売価格も原価も現在の状態を維持するのなら、原材料の値上がり分だけ人件費を下げざるを得ません。


少子化対策をして人口を増やせば経済が良くなると思い込んでいる人が多いですが、本当にそうなるのか疑問です。

国の政策に頼るよりも、自らが長期投資家となって社会的に意義がある企業を応援した方が、世の中が豊かになり、そして、自分の収入も安定して増やしていけるのではないでしょうか?

10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書)

10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書)

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